大学運営や受験産業に影響大 日本の「難関」大学が減る理由:偏差値(2/4 ページ)
日本の「難関」大学は減っていると筆者は主張する。大学運営や受験産業にも大きな影響を与える事態だ。その理由とは?
増え続ける大学の定員
日本では「顧客」である子どもの数が減少している一方、大学の定員は近年まで増えている。その結果、大学生の数は19年に290万人と最多となっている。
大学は、学生が支払う学費だけで運営されていない。国からの助成金なども大きな収入源で、学生の数も影響する。経営上、学生の数を増やそうとする傾向は続くだろう。その結果として、学生の質が低い「Fランク」などと揶揄(やゆ)される大学が出現しているのは、家族に受験世代がいる読者には浸透している話だ。
日本の有名大学は、どのくらい「難関」大学なのか?
受験における難易度を示す指標として一般的なのは偏差値だ。もともとは、統計学で使われる用語だった。定義の説明は省略するが、要するに「上位何%にいるか」を示すものだと理解して読み進めてもらいたい。
上位からの位置・順番と理解すると、偏差値が示すのは次の通りになる。
平均の偏差値50が、全体の上位50%に入っていることを示す。偏差値55は、全体の上位30.9%に入っている。難しいとされ始める偏差値60は、上位15.9%だ。
一般的に、「難関」とされる偏差値65で、上位6.7%。最難関の偏差値70になると、トップ2.3%となる。
偏差値65は、確かに難関だと感じる読者は多いだろう。しかし、この数字は、あくまでその年の受験生「全体」に対する比率だ。そもそも、受験世代の人数が減っているのに反して、大学の定員は増えているのだ。世代人口が多かった時代と比べたら有名大学といえども、今は入りやすくなっているのは当然だ。
では、有名大学というのは実際のところ、どの程度「難関」なのか? 今回、独自に分析した。
難関大学とされる旧帝大(東京、京都、大阪、名古屋、東北、北海道、九州)と有力国立大学(一橋大学、東京工業大学、神戸大学)、関東の有力私大(早稲田、慶応、上智、東京理科大)、関西の有力私大(同志社、立命館)の定員数は合計で約5.5万人になる(以下、難関名門大学)。
実際の入試における合格者数は、私立大では辞退者を見込んで定員よりかなり多いが、ここは定員数と人口から考えてみたい。
同世代(同学年)の子どもが、全て大学受験したいとするのはやや強引だとは承知の上で、「難関名門大学の定員に対する日本の受験世代人口」の比率を次の表に示す。
この表では、現在と過去の定員数を同じとしている。過去の定員数は、本当はもっと少なかったが、今回は便宜上、現在の定員と同規模としたうえで紹介したい。
ユーチューバーやスポーツ選手など、若くして世界で活躍し、大金を稼ぐ若者が注目されている昨今ではあるが、若者の「上位」は大学に進学したいとしよう。第1次ベビーブームの頃、難関名門大学に入るためには70相当の偏差値が必要だった。現在、子どもが減っていくことによって、偏差値66相当までハードルが下がっている。
偏差値65が「難関」のハードルとすると、19年に生まれた世代にとって、現在の大学の定員が減少しなかったとすれば、入学に必要な偏差値は65。入るのが「難関」かどうかギリギリのラインだ。
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