今年ブレイクしそうな「アップサイクル」、どうやって活用しているのか:事例紹介(3/4 ページ)
「アップサイクル」という言葉をご存じだろうか。不要になったモノに新たな付加価値を与え再利用することだが、今年ブレイクしそうな予感が漂っているのだ。アップサイクルを活用している事例を見ると……。
フード業界でもアップサイクル
このように、ファッション業界でメジャーになりつつあるアップサイクルだが、他の業界でも盛り上がりを見せている。
そのひとつが、フード業界だ。ファッション業界と同じく廃棄物の問題を抱えるフード業界は、かなり前からアップサイクルの取り組みを行なってきた。ところが、アップサイクルが「クールなトレンド」として注目され始めたのは、ごく最近になってからだ。
実は、食品廃棄物のビジネスは19年に4670億ドルに達し、今後10年で年平均成長率5%が見込まれる巨大市場として、ビジネス参入が活発になっている。
その中でも、ビジネスパーソンの興味を引きそうな例が、ビールを醸造する過程で出る穀物の搾りかすをアップサイクルしたビジネスだ。
ビールの醸造過程で使用される穀物は、世界全体で年間900万トンにもなるが、その使用済み穀物の多くは家畜の飼料として再利用されてきた。それでも、すべてを再利用することは難しく、およそ10%ほどは廃棄処分されている。
ところが、新たに開発した使用済み穀物の有効利用が、意外なブームに乗って好調だという。そのブームというのは、過去に記事で取り上げたこともある「植物性プロテイン」人気のことだ。健康志向の高まりから、植物由来の原材料を加工して作られる食品の需要が伸びているのだ(関連記事)。
こうしたことから、ビール世界最大手のAnheuser Busch InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)が支援しているサプライヤーの「EverGrain」は、醸造過程で出る使用済み穀物を機能性成分としてフード業界に売り込んでいるという。
同社は、年間140万トンもの使用済み穀物を2種類の機能性成分にアップサイクルしている。そのうちの一つ「EverPro」は非常に溶けやすいため、乳製品や飲料に使用するのに適した原材料となっている。成分の80%がプロテインで、食物繊維が豊富に含まれているのが特徴だ。
また、もう一つの「EverVita」は、高タンパク質の大麦粉として、焼き菓子やパスタなどに適しているようだ。
醸造過程で出る使用済み穀物の主成分は大麦で、大豆など他の植物性プロテインと違い、独特の風味や苦味が少ないため口当たりがいいという。また、大麦のプロテインは溶けやすいことから、見た目やテクスチャーを変えないで栄養素を足すのに使いやすいようだ。
つまり、消費者が求めている、栄養価が高く環境に優しい製品を開発しようとしている製造業者にとって、食品加工が容易で便利な原材料となっている。
関連記事
- なぜ「すしざんまい」は、マグロの初競りを自粛したのか
マグロの初競りで一昨年は3億3360万円――。驚くような落札額で世間をにぎわせてきた「すしざんまい」(運営:喜代村)が、今年のマグロ初競りを自粛した。なぜ自粛したのかというと……。 - チキンサンドに何が起きているのか 全米で人気爆発の背景
米国のファストフードで、チキンサンドが盛り上がっている。話題の商品を手に入れるために、長蛇の列ができることも珍しくないが、そもそもなぜチキンサンドが売れているのか。以前からあったメニューなのに……。 - 予約件数は3月比1500%! 新型コロナ時代に「キャンピングカー」がブームの兆し
新型コロナの感染拡大を受けて、ニッチな旅が流行の兆しをみせている。キャンピングカーだ。米国では利用者が急増していて、日本でも同じように……。 - 「ふざけんなよと」怒り爆発 大手外食が“露骨に冷遇”されるワケ
「ランチがどうのこうのと言われました。ふざけんなよと」――。サイゼリヤの社長がキレたわけだが、その気持ちも分からないわけではない。東京都の感染拡大防止協力金(1日6万円)をみると、中小企業や個人事業主には配られるのに、なぜ大手チェーンには支給されないのか。その背景にあるのは……。 - スーツに見える作業着は、なぜ3倍ペースで売れているのか
スーツに見える作業着をご存じだろうか。2018年、水道工事を行っている会社が発売したところ、売れに売れているのだ。多くのアパレルが苦戦している中、なぜこの商品はヒットしているのか。グループ会社の社長に話を聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.