4500億円赤字予想のJR東日本、「Suica」「シェアオフィス」強化に見るサービスの将来像:緊急事態宣言で下方修正(2/2 ページ)
JR東日本は、2021年3月期の連結純損益を4500億円の赤字とする見通しを発表。緊急事態宣言が再発出された影響で従来予想を下方修正。経営環境の激変を踏まえ、生活関連サービスの取り組みを強化する。
新たに定めた「生活」サービスの目標とは?
JR東日本は新型コロナ感染拡大の前から、移動ニーズ縮小などの環境変化を見据えた中期経営計画を掲げていた。18年に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」だ。新型コロナの影響で変化が一気に加速したことから、今回、26年3月期を新たなターゲットとした数値目標を設定した。
新たな目標では、26年3月期の連結売上高を3兆900億円とする。これまでの目標では、23年3月期に3兆2950億円とする数値を掲げていたことから、今後の需要動向などをより厳しく予想した数値のようだ。運輸事業の売上高は1兆9700億円としている。また、連結営業利益は4500億円の目標。旧目標では、23年3月期に5200億円としていた。
「変革2027」では、当初から「生活における“豊かさ”のために新たな価値を提供する」ことを掲げていた。鉄道を中心とした輸送サービスを変革し、グループの総合力による生活サービスやICカード「Suica」関連サービスを成長させていく方針で事業を進めていた。今回、生活サービスの具体的な取り組みの数値目標も新たに設定。人々の行動が大きく変化する中で、生活関連事業により注力していく方針が読み取れる。
例えば、18年に発表した23年3月期までの目標では「Suica等交通系電子マネー利用」が月3億件だったが、今回公表した26年3月期までの目標では月5億件とした。「JR東日本が提供するMaaSプラットフォームのサービス利用件数」も従来目標の2倍以上となる月7500万件としている。また、前回は定めていなかった「モバイルSuica発行枚数」の目標を、新たに2500万枚に設定した。
さらに大きく広げようとしているのが「シェアオフィスの展開」だ。従来の目標は累計30カ所だったが、今回、26年3月期までに累計1200カ所に広げる目標を定めた。また、子育て支援施設は累計170カ所、住宅展開戸数は累計3800戸、5G整備エリアは累計100カ所とする目標を設定している。
輸送サービスの急激な需要縮小の影響は大きいが、社会変化を見据えて進めてきた新たな土台を生かし、収益確保を目指す方針だ。
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