回転ずし市場、初の縮小へ “持ち帰り”伸ばすスシロー、「鬼滅」コラボのくら寿司は好調だが……:3%減の見込み
帝国データバンクによると、2020年度の回転ずし市場は、前年度比約3%減の7200億円前後にとどまりそうだ。右肩上がりで成長してきたが、コロナ禍で初めて縮小する可能性が高くなった。
帝国データバンクは2月3日、2020年度の回転ずし市場が、前年度比約3%減の7200億円前後にとどまりそうだと発表した。大手チェーンを中心に市場拡大を続けてきたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、初めて縮小する可能性が高くなったという。
回転ずし市場は、出店攻勢やファミリー層に支持される商品開発などによって右肩上がりで成長。19年度は過去最高の7400億円台に達していた。
20年度も、テークアウトや宅配サービスの拡大、「Go To Eat」事業によってコロナ禍でも支持を集めた。しかし、緊急事態宣言が出されていた4〜5月に休業や時短営業を実施した影響は大きく、企業によってはこの時期の売上高が前年同期比7割減となった。また、テークアウトやデリバリーのサービスを提供する業態も増え、競争が激化している。
上場している回転ずしチェーン4社のうち、国内事業が好調なのはスシローとくら寿司の2社。スシローは、客単価の高いテークアウトが順調で、20年9月期の売上高は過去最高を更新した。くら寿司は20年10月期決算で、海外店舗の不振によって減収、初の最終赤字に転落したが、国内事業は好調。国内事業の売上高は前期比0.5%増で過去最高だった。
くら寿司は、社会現象となった「鬼滅の刃」とのコラボレーションが追い風になった。9月には既存店売上高が7カ月ぶりに前年を超え、11月は前年同月を3割以上上回った。
一方、かっぱ寿司や元気寿司は21年3月期の業績予想で減収減益や赤字を見込む。また、書き入れ時であったはずの20年12月は4社とも売上高が前年同月を下回っており、新型コロナの感染再拡大や2度目の緊急事態宣言が今後の業績にも響く可能性がある。
さらに、地方で展開する回転ずしチェーン中堅10社の業績(予想を含む)も、平均1割超の売上高減少となっている。
大手を中心に、テークアウトのサービス拡大や非接触を打ち出した店舗の展開など、新たな需要に対応しているが、業界全体で再び成長に転じることができるかどうかは不透明だ。
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