ニトリがこっそり始めたアパレルブランド「N+」 その後どうなった?:新連載・磯部孝のアパレル最前線(2/3 ページ)
コロナ不況といわれる昨今、島忠の買収劇などマスコミに取り上げられる機会も増えたニトリの異業種へのチャレンジともいえる「Nプラス」の現在値について今回は検証してみたい。
アパレルの大量閉店を逆手に出店を加速
20年10月におこなわれた21年第2四半期の決算発表の席上で同社の似鳥昭雄会長は、Nプラスを200店舗まで拡大する構想を明かした。また、新型コロナウイルス感染拡大により小売業界で「寡占化の時代に入った」との見解を示した。
アパレルでは大量閉店の計画を発表する企業も多く、テナント撤退は商業施設側にとってモールの空洞化につながる。ニトリではこれをチャンスと捉え出店には積極的な姿勢をとった。21年に最大20店舗、22年以降は年間で20〜30店舗を出店。早い段階で100店舗体制を目指し、「数は力」として最終的に200店舗体制を目標と掲げた。
このコメントを聞いて少し違和感を覚えた。その違和感とは、成功モデルの多店舗化は王道と思えるのだが、現時点で「Nプラス」でどのくらい採算が取れているのか疑問符が付くからだ。数字に関して公表されていないので推測の域を出ないのだが、この店舗の繁盛店をいまだ見つけたことがない。
無謀な戦略だった? 「ニトリ」と関連付けない多店舗化
当初は「Nプラス」とニトリと関連付けない戦略で多店舗化した。これもかなり無謀ともいえるやり方で、話題性や新規性も無いのに、ただショッピングセンターに出店していただけだから売れるはずがない。この戦略に何の意図があったのかいまだに分からないのだが、ここにきて「ニトリ」との関連性を全面に打ち出してきた。
最近の新店舗などは店舗サインにも「N+ ニトリ」と、ニトリという圧倒的なネームバリューを活用するやり方に変えてきたようだ。当然、ニトリのメンバーズポイントとの汎用性は、お客、ニトリ双方のメリットとなるのだから、始めからそのようにすべきだったのではなかろうか。
デビューして2年、着実に店舗を展開してきた事で改善されてきた部分もある。それは商品のデザインと品ぞろえだ。そもそもニトリとはシンプルな日用品を「お値段以上」と感じさせてくれる品質と、手に取りやすい価格で展開している印象が一般的だ。
そのニトリが発信するファッションも、一般的な印象の延長線上にあるのが好ましく自然なのだ。最初に比べ今は、普通に着ていくのに難のないデザインの商品が増えてきたような気がする。相変わらずお値段も手頃なので売れ筋はすぐに売れてしまって欠品したままの可能性が高い。その証拠にイメージスナップでモデルが着用している洋服は店内に無かったりする。
関連記事
- 4月から「税込表示」が義務化 ”税別”のユニクロは実質値下げ? アパレルが逃れられない呪縛
4月1日より税込み価格表示が義務化される。特に商品の安さを武器に戦う企業にとっては重要な意味合いを持つ。対応として次の2つのケースで分かれることになる。本体価格+税表記で訴求している企業と、すでに税込み表記で訴求している企業。代表的な例をあげるならば前者がユニクロで後者がワークマンといったところだろうか。 - AOKIの”4800円”スーツが好調 「パジャマスーツ」は世界各国から注文が
紳士服大手のAOKIが発表した、立体製法とオリジナル素材を採用した「アクティブワークスーツ」の予約状況が好調だ。 - 「炎上」と「改革」で4000億円企業に コロナバブル後に真価が問われるZOZO
サービス開始からわずか17年で商品取扱高が約22倍以上に伸びたZOZOTOWN。急成長できた背景とコロナ禍でも成長し続ける強みを著者の磯部孝氏はこう分析する。 - 2度目の緊急事態宣言に”楽観視”は禁物 アパレル企業が今やるべきことは
2回目となる緊急事態宣言が1都3県に出された。都心の百貨店、ファッションビルは1〜2時間の閉店繰り上げを決めた。2回目となる今回の措置に向けてアパレル企業もコロナ対応が試される事になる。そこで、考えられるリスクと乗り越えるためのヒントを著者の磯部氏はこう分析する - ニトリの珪藻土商品、回収対象が355万個へ拡大 店舗に相談カウンター設置
法令の基準を超えるアスベストが含まれていたとして、バスマットなど珪藻土商品の回収を発表したニトリホールディングス(HD)は12月25日、全ての珪藻土商品の検査が終了したと発表。すでに発表した商品と合わせて、回収対象は23製品、355万個超となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.