ニトリがこっそり始めたアパレルブランド「N+」 その後どうなった?:新連載・磯部孝のアパレル最前線(3/3 ページ)
コロナ不況といわれる昨今、島忠の買収劇などマスコミに取り上げられる機会も増えたニトリの異業種へのチャレンジともいえる「Nプラス」の現在値について今回は検証してみたい。
アパレル展開の継続性に疑問
ニトリ本体のアパレル展開もあまりうまくいっているようには見えない。取り扱い品種の多さで手が回らないのか、売上優先至上主義の障壁のせいなのか、アパレル商品展開の継続性さえ疑わしい。
せっかく「Nクール」「Nウォーム」という機能ブランドを持ちながら、アパレル展開が広がっていかないのは残念であり、ライバル企業にとっては有難いことだ。取り扱い店舗も限られ、大型店ですら目にできるのは寝具・寝装品コーナーのひとエリアにルームウェアの品ぞろえが女性物中心に置いてあるだけ。機能肌着にいたっては、後方のエンド部分に、申し訳ない程度に販売している姿を目視できる程度だ。
ニトリそのものも欠品、売切れの印象が強い店だ。しかし、裏を返せばいまだ十分に伸びしろがあるとも言える。欠品、売切れ商品は、即座に補充できれば売上につながるからだ。設定数量と在庫バランスを見直していく事でロスの回避にはなるはずだ。このNプラスも、いいところどりのような、素人然とした展開手法をあらためて、単業態でもしっかりと利益が稼げるように本気で取り組んだら恐ろしい存在になる。何といっても、資本力と集客力は存分にある。似鳥会長の言う「寡占化の時代」であればなおさらだ。
商品そのものが持つ価値として同社が掲げる「お、ねだん以上。」その真意にについて同社は「想いは、細部に宿る。だから価格や品質にまつわる珠玉の物語がある」「適正であるということは何か?」と、問い続けるニトリの“創造”をWeb上で紹介している。
ヤング&ルビカム社が開発したブランド評価モデルによれば、ブランドそのものの能力は「尊重・評価」×「認知・理解」。指標としてブランドの成長活力となるのは「差別化活力」×「適切性」とある。Nプラスも100店舗、200店舗と到達した時には、無視できない存在感のあるブランドに育つ可能性に期待したい。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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