10〜12月は5割増 キリン「一番搾り」缶を急伸させた“ビールで糖質ゼロ”の潜在ニーズ:コロナ禍で拡大した需要とは(3/3 ページ)
コロナ禍で業務用を中心にビール類の販売が落ち込む中、キリンビール「一番搾り」は家庭用の缶商品が好調。新商品「一番搾り 糖質ゼロ」のヒットが貢献している。ビールで初めて糖質ゼロを実現し、幅広い層の新たなニーズを獲得。存在感を強めている。
「一番搾り」ブランドの缶商品、過去10年で最大の販売量に
20年は、一番搾りブランドの缶商品にとって、過去10年で最多の販売数量を記録した1年になった。新商品の効果も大きいが、一番搾りの本体もコロナ禍の中で前年比3.1%減に踏みとどまっている。北島氏は「17年から“おいしさ”のイメージを高める取り組みを強化してきた。コロナ禍で広がった『自宅で食事をしながら、ゆっくり、じっくりとビールを味わう』需要に合っていたのでは」と振り返る。
21年は、一番搾りブランドの缶商品全体で、前年比24%増の成長を目指す。2年ぶりにリニューアルする一番搾り本体は13%増、「一番搾り 糖質ゼロ」は通年で430万ケースの販売を目標として掲げる。
特に、本体のリニューアルに対する期待は大きい。「2〜3年に1回リニューアルしているが、毎回『もっと何かできないか』と進化させていく精神で取り組んでいる」(北島氏)。今回は、雑味を抑え、麦本来のうまみをさらに引き出す改良を施したという。
また、現状ではブランド全体の3分の1程度の販売を占めるほどになった「一番搾り 糖質ゼロ」については、さらなる成長を狙う。北島氏は「一番搾りブランドの“第2の柱”として育成していく。お客さまが(糖質カットなどの)機能系商品を積極的に取り入れる動きは今後も大きくなる。ニーズを掘り起こしながら、ビールの総需要拡大につなげたい」と話す。
ビールの主力ブランドの新商品が、「少しでも健康に気を付けたい」というニーズに対して、新しい選択肢を提供した。ビール類の国内市場が縮小を続ける中、定番商品が中心のビールで新しい需要を獲得できたことは、21年以降の明るい材料になるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
過去最高更新を続ける、キリン「本搾り」 “熱いファン”に支えられるブランド戦略
キリンビールの缶チューハイ「本搾り」は、2019年まで8年連続で2桁成長しており、20年も過去最高を更新しそうだ。その背景には、熱いファンの存在がある。果汁とお酒だけという難しい製法を続けているのは、その特徴的な味わいにほれ込む顧客の期待に応えるためだ。
11年ぶり過去最高 キリン「氷結」が超えた壁
缶酎ハイのロングセラーブランド、キリン「氷結」。2017年の販売数量は11年ぶりに過去最高を更新。新商品「旅する氷結」も好調だ。強さの理由を聞いた。
2年目も売れ続ける「本麒麟」 ロングヒットの鍵を握る“2つの数字”とは
キリンビール「本麒麟」が2年目も売れ続けている。多くの失敗を経て“味”を追求したことが奏功。初年度の7割増で推移している。第3のビールの競争が激化する中でヒットした理由と今後の成長の鍵は? そこには、同社が重視する“2つの数字”がある。
月2496円で1日1杯 ビールの「サブスクリプション」サービスの狙い
スプリングバレーブルワリーは6月17日から、月額制で1日1杯ビールを提供するサブスクリプションサービスを開始。東京・銀座の1店舗で実施する。
キリン、糖質ゼロのビール10月発売 健康意識の高まり背景に
キリンビールは糖質ゼロのビール「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を10月6日に発売すると発表した。10月から段階的に始まる酒税法改正でビールが減税されることを受け、売り上げの拡大を狙う。また、コロナ禍で健康意識も高まっていて、それらのニーズにも応えられるとしている。
