コロナ禍で崩壊する「日本式・壁ビジネス」 改革途上の地銀が「統合」だけでは乗り切れなさそうなワケ:カギは「付加価値型」へのシフト(1/4 ページ)
コロナ禍でデジタル化が加速している。その影響で、日本式な「壁ビジネス」も崩壊しつつある。多くの業種で変革が迫られる中、「統合」を前提に改革が語られている地銀はどう対応していくべきだろうか。
コロナ禍情勢の長期化により、各方面でのデジタル化が加速度的に進んでいます。少し前までは専門用語の域を出なかったデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉までが、ビジネスに不可欠なキーワードとして広く浸透しているという点には驚きます。もちろん、きっかけはテレワークの普及といえます。私は、こうした本格化するデジタル化の効用を、あらゆるビジネスシーンにおける「壁」を取り除くこと、と捉えています。
壁とは、単純に物理的な障壁にとどまらず、制度によって接触を遠ざけられている状態や、あるいは業界内における風習で隔離されている状態なども含めて考える必要があります。具体的には、従来の壁がなくなることで、これまで仲介者を経なくては届かなったものが直接手に入るようになったり、従来とは違うやり方で目的に到達することができたりするようになって、さまざまな業界でビジネスモデルが大きく変わるのです。
つまり、壁が取り除かれることは、単に利便性や効率性の向上に資するだけでなく、多種多様なビジネスにおいて新たな展開を促しているとも思われます。一見デジタル化とは縁遠いように思える業界における改革のヒントも、間接的ながらここにあるのかもしれません。そんな観点で、コロナ禍により加速したデジタル化の流れを追ってみると、実に面白いものが見えてくるのです。
日本式のビジネスモデルが、どんどんと崩壊していく
分かりやすい具体例を挙げるなら、問屋を代表とした仲介業でしょう。ステイホームの広がりによって、デジタル取引やECが爆発的に進展しました。仲介業者を利用していた小売店や企業が、欲しい商材を直接かつ容易に手に入れることができるようになり、仲介業者は不要になる流れが見えてきました。いってみれば、商材を手に入れる壁がデジタル化によって取り払われてしまったがゆえに、商流が大きく変わってしまったのです。至って日本的ビジネスモデルである問屋制度が、ついに崩壊の道を歩み始めたといえるでしょう。
これまたいかにも日本的で、「村」意識の強い自動車業界もしかりです。新時代の自動車であるEV(電気自動車)は、従来の自動車製造における「液体燃料を燃やして動力にする」という特殊技術の壁を、一気に取り払うことになります。そうなると、これまで壁によって新規参入を阻まれてきた電子機器メーカーをはじめとする異業種に、自動車製造業を自社ビジネス化するチャンスが訪れるわけなのです。
その代表がアップルであり、壁に守られていた業界内の「村」企業は、一斉に新たな競争の荒波にもまれることになります。今後予想されるのは、大手メーカーを頂点とする垂直統合型の「業界村」構造が、新規参入業者の水平分業的発注によって大変革が起きるという流れでしょう。
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