コロナ禍の経営悪化、企業の“既往症”が影響? 2021年に向けた、マネジメントのヒントを探る:マネジメントで振り返る2020年(1/4 ページ)
コロナ禍が猛威をふるった2020年。さまざまな業界・企業が経営悪化に見舞われた。経営コンサルタントの大関暁夫は、経営悪化した企業は“既往症”が影響しているとみる。マネジメントを軸に、1年を振り返ってみよう。
2020年も残すところあとわずか。この1年は、あらゆる面で新型コロナウイルスに振り回された1年でありました。もちろん、経済界もコロナ禍抜きでは語ることのできない年でした。そこで、21年に向けて押さえておくべき企業マネジメントの出来事を振り返りつつ、ヒントを探ってみます。
まずはコロナ禍が直接企業に及ぼした影響ですが、極論すると、既往症のある人が新型コロナに感染すると重篤化しやすいのと同じく、企業経営として既往症を持っている企業、そうでない企業で明暗が分かれた形になったといえそうです。企業経営に関する既往症の影響についても、以前から傍目(はため)にも見えていたもの、そうではなく見えていなかった潜在的疾患がこの折に表面化したものと、さまざまなパターンの別があったように思います。
名門企業が苦戦を続けるアパレル業界
コロナ禍で最初の大型倒産としてまっ先に大きく報じられたのが、5月のアパレル大手レナウンの破綻でした。直接の引き金は、10年来の資本提携先である中国資本「山東如意科技集団(以下、山東)」の経営不振による売掛金未回収であり、それがボディーブロー的に効いているところへコロナショックが襲い、資金ショートし破綻に至りました。
さらに元をたどれば、山東に支援を求めた10年の段階で、既に先細り感が出ていたデパート依存の販売体制が指摘されていたにもかかわらず、その後も売上が右肩下がりを続けていました。実際、19年12月期でなおレナウンのデパート向け販売は売上全体の55%を占め、EC売上は3%にすぎないという実情でした。明らかな既往症対処の遅れが、予期せぬコロナ禍の到来により致命傷になったと言えます。
レナウンに限らず、アパレル業界はおしなべて苦境に陥っています。老舗・名門企業の中でもオンワード、三陽商会など、外出自粛による消費者の購買意欲低下のあおりを受け、過去最大規模の赤字を計上するなど、苦しいかじ取りが続いています。
レナウン同様、デパート中心販売からの脱却に遅れていたオンワードは21年2月期に700店舗を閉店すると発表し、所有不動産の売却で何とかつないでいる状況にありますが、立て直しに向けた新たな展望は見えていません。三陽商会は、主力ブランドであった英バーバリーとのライセンス契約が15年に打ち切られて以降、売上が半減。これまた遅々として新たな戦略を見いだせず、コロナ禍のあおりを受けた3〜8月期売上では前年比でさらに半減する大打撃を受け、5期連続赤字は確定的です。いよいよ瀬戸際に追い込まれた感が強く漂っています。
アパレル名門企業たちからの教訓は、実績のある企業でも時代の潮流を甘く見ず、「過去の栄光」を捨て去る勇気を持ちながら、先手を打って変革に対応する、といったところでしょうか。
関連記事
- 「2代目」が陥るワナ――大戸屋の、“愛言葉”を忘れた値下げ路線が失敗しそうなワケ
経営権を巡ってドタバタ劇を繰り広げる大戸屋。“愛言葉”を忘れた新体制による、祖業を見切った値下げ路線は成功するのか。大塚家具とともに、大戸屋でも起こっている創業家2代目が陥るワナとは? - セコい値下げで喜んでいる場合ではない、NTTのドコモ完全子会社化ウラ事情
NTTがドコモを完全子会社すると発表。5Gや6Gのイニシアチブ奪還に向けて歓迎する声も多いが…… - 本当に大丈夫? 菅首相の「地銀再編」発言が、再び“失われた10年”を呼びそうな理由
菅首相がしきりに口にする「地銀再編」。確かに苦境に置かれる地銀だが、再編はうまくいくのだろうか。筆者は過去の長銀破綻を例に出し、また「失われた10年」来てもおかしくないと指摘する。 - 半沢直樹を笑えない? 現実に起こり得る、メガバンク「倍返し」危機とは
7年ぶり放映でも好調の「半沢直樹」。「倍返し」に決めぜりふに銀行の横暴を描く姿が人気だが、どうもフィクションだけの話では済まない可能性が出てきた。現実のメガバンクに迫りくる「倍返し」危機とは? - 7年ぶりに新作の半沢直樹 1月放送の「エピソードゼロ」からメガバンクの生存戦略を読み解く
7年ぶりに続編が放映されるドラマ「半沢直樹」。当時から今までで、銀行界はどう変わった? メガバンクの生存戦略と作品を合わせて読み解く。 - 「カメラ事業売却」の衝撃 業務提携中のオリンパスとソニー、祖業を巡る両社の分岐点とは?
カメラ映像事業の売却を発表したオリンパス。好対照なのが、業務提携関係にあるソニーだ。コロナ対応を巡る両社の分岐点とは? - 長期化するコロナショック レナウンの次に危ない有名企業とは?
新型コロナの影響はとどまらず、航空業界、観光業界を中心に甚大な影響を与え続けている。日本企業では、レナウンの破綻が話題となったが、経営に詳しい筆者の大関暁夫氏は、次に危ない企業として、2つの有名企業を挙げる。共通するのは、両社とも“時限爆弾”を抱える点だ - 都銀再編時に「ごみ箱」構想を持っていた金融庁と地銀救済で手を組むSBIホールディングスは天使か、悪魔か?
SBIホールディングスが仕掛ける「地銀救済」。陰には金融庁の影響も見え隠れするが、「証券界の暴れん坊」と目されるSBIと金融庁、それぞれの思惑とは? 過去、銀行勤務時代に大蔵省との折衝を担当していた筆者によると、90年代の都銀再編時に官僚は「ごみ箱」構想を持っていたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.