あわあわあわ! なぜアサヒビールの「生ジョッキ缶」から、泡が次々に出てくるのか:水曜インタビュー劇場(クレーター公演)(3/6 ページ)
缶のフタを開けると、泡が自然に発生するビールが登場する。アサヒビールは4月に「生ジョッキ缶」を発売。缶ビールといえば泡がたたない構造をしているのに、なぜこの商品は泡が出てくるのか。同社の担当者に開発秘話を聞いたところ……。
泡を出すな→泡を出せ
中島: そうかもしれません。当社も1980年代にフタが全部開く缶ビールを発売したんですよね(その後、終売)。こうした経緯があったので、10年ほど前に同じような商品を開発しようと思いました。
土肥: 日本酒のワンカップ大関のような形ですね。
中島: 日本酒で親しみがあるのであれば、ビールでも支持されるのではないかと考えて、試作品をつくることに。試飲に参加していただいた人に話を聞いたところ、「フタがパカっと開くのはおもしろい。でもねえ」といった声が多かったんですよね。なぜか。当時の試作品は泡が出てこなかったので、フタを開けても黄色い液体を眺めるだけ。ということもあって「おいしそうに見えない」「買いたいと思わない」といった声が多く、開発は中止することに。
当時の開発は失敗に終わったのですが、ビールというのはやはり液体と泡がなければいけない。この2つが見えることで、お客さまはビールであることを認識して、おいしそうに感じるのではないか。上から液体を見ただけでは驚きを感じることはなく、泡がキモになると感じました。
土肥: ビールに泡が必要であることは、“一杯目は必ずビール党”のワタシも全面的に同意しますが、やはり技術的なハードルが高かったのではないでしょうか。先ほども申し上げたように、先代、先々代の開発担当者も「缶ビールで、なんとか泡を出せないかなあ」と考えていたはず。中島さんも、10年ほど前に同じようなことを考えていました。
中島: 缶ビールからどのようにすれば、泡を出すことができるのか。この課題を解決するのに、2年ほどかかりました。なぜ長い年月がかかってしまったのかというと、そもそも缶ビールの場合、フタを開けても泡が出ないように設計しているから。フタを開けると泡がたくさん出てきて、こぼれるようではダメ。そうなってはいけないので、何度も何度も試験を繰り返すんですよね。
缶ビールの開発担当者は「缶から泡を出してはいけない」という発想で取り組んでいるのですが、今回の商品は真逆のことをしなければいけません。フタを開けたら、泡をどんどんつくり出さなければいけない。つまり、真逆の発想が求められたんですよね。言葉で表現するのは簡単かもしれませんが、発想を180度転換してからのスタートは、かなり苦労しました。
土肥: 入社当時から「泡を出してはいけない」「泡をこぼしてもいけない」と散々言われてきたのに、「泡を出せ」「こぼれないように出せ」と言われると、あわあわあわとなりますよね。
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