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なぜフェイスブックが「いじめっこだ」と世界から叩かれているのか世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

米フェイスブックが強大な影響力を批判されている。最近はオーストラリアでニュース記事の利用に料金を支払うよう求められ、強硬措置を取った。一方、グーグルは記事に対価を支払う新サービスの契約を各国で進める。劣勢のフェイスブックの今後の対応は?

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“強欲”とみられているフェイスブック

 もともと以前から、フェイスブックはその影響力の大きさによって、世界各地の政府から好意的には見られていない実態がある。その背景には、課税を逃れながら、世界中のユーザーの個人情報を使った広告費が売り上げの9割を超え、独占企業のように振る舞っていると見る向きもあるからだ。

 それだけではない。米国の黒人差別に絡んだ抗議デモなどが起きてもヘイトスピーチを放置していると批判が起きたり、陰謀論をばらまいていたドナルド・トランプ前大統領や右派に寛容だと批判されたりしてきた。また人権団体などが、非人道的な行為や暴力行為を煽るような投稿を放置している(Twitterなどは削除した)として、米大手企業に対してフェイスブックに広告を出さないように訴える運動を行った。そんなことで、実際にノースフェースに始まり、コカコーラ、スターバックス、ホンダ、リーバイス、ファイザー、マイクロソフトといった大量の企業が広告ボイコットを行った。

 そんな批判は社内にも広がり、ストライキが起きてザッカーバーグがやり玉に挙げられたこともある。ザッカーバーグは独裁傾向が強い、とメディアで批判されたことも一度や二度ではない。米議会からも何度も呼び出しを食らって、証言に立っている。

 こうしたコンテンツに絡む話以外にも、そもそもこうしたビッグテック企業については、ユーザーデータを利用して収益を出している国々で税金を払っていないとして、デジタル課税の問題がずっと議論になっている。欧州ではすでに課金を始めたところもあるが、世界的に今後の課税状況の行方が注目されている。課税対策は企業として必ずしも否定されることではないが、莫大な利益を出しながら支払いを渋る姿勢は「強欲」であると多くの目には映る。

 とにかく劣勢のフェイスブックがまた、今回のオーストラリアの件で話題になったということだ。オーストラリアのニュース記事を利用できなくしたことに対して、同社の主張はこうだ。 ユーザーが見ているコンテンツでニュースの占める割合は4%以下だが、それでも試算では、20年の1年間で、リンクなどによるユーザー誘導で3億1500万ドルの利益をオーストラリアのメディアにもたらしているという。課金購読者を増やす手助けをしているという言い分もあるだろう。

 この先、オーストラリアとフェイスブックの争いがどう展開するのか要注目である。その結果が他の国にも影響を及ぼすことになるからだ。日本だって例外ではない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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