なぜフェイスブックが「いじめっこだ」と世界から叩かれているのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
米フェイスブックが強大な影響力を批判されている。最近はオーストラリアでニュース記事の利用に料金を支払うよう求められ、強硬措置を取った。一方、グーグルは記事に対価を支払う新サービスの契約を各国で進める。劣勢のフェイスブックの今後の対応は?
「いじめっこ少年のやり方」だと批判
この動きに、世界各地から批判が噴出することになった。英国のデジタル・カルチャー・メディア・スポーツ委員会のトップである国会議員のジュリアン・ナイトは「オーストラリアでフェイスブックがやり始めたこの行為、つまりいじめっこ少年のやり方を受けて、世界中の議員らは同社に対してさらに厳しくなるだろう」と語った。
要するに、オーストラリアでのフェイスブックの動きは、世界的な批判を浴びて、敵を作ることになるとナイトは警告している。
ちなみにオーストラリアといえば、「News Corp」という世界的なメディア企業が誕生した地である(現在の本社は米ニューヨーク)。CEOはオーストラリア人である「メディア王」のルパード・マードックで、オーストラリアの大手紙や地方紙のみならず、大手テレビ局や、米ウォールストリート・ジャーナルも傘下に収めている。要するに、世界のメディアの行方を左右する企業の影響力が強い国として、世界的にもその動向と発言は注目される。
一方のグーグルは、メディア企業と契約を進めている。実は、グーグルは新しいニュース配信サービスである「News Showcase(ニュース・ショーケース)」をドイツやブラジル、そしてつい先日オーストラリアでも開始しており、このサービスに必要不可欠であるニュースのコンテンツにはカネを払う方針をとっている。これから英国とアルゼンチンでも開始されるし、カナダではメディア企業との交渉が続いているようだ。これまで世界のメディア企業と500以上の契約を結び、今後3年で合計10億ドルを支払うことになっている。
このサービスの特徴は、会員でなければ読めない一部ニュースサイトの課金記事も読めるようになること。そしてグーグルはこのサービスによって、メディア側も課金会員が増える効果が見込めると見ており、ウィンウィンであると主張している。とはいえ課金記事も読めるというこのサービスなら、支払いが発生するのは当然かもしれない。
ただ、同社の検索エンジンで表示されるニュースはまた別である。これについては引き続き、交渉が続けられることになる。
世界的には、フェイスブックへの風当たりは強い。オーストラリアのように支払い交渉を法律で義務化すべきとの議論も出ているカナダの専門家は、フェイスブックのような独占企業には多くの国が多勢で対応すべきだとメディアに語っている。
注目すべきは、フランスだ。フランスでは20年、裁判所がグーグルに対して、メディア企業との支払い交渉をするよう判決を下した。19年に採択された欧州連合(EU)の著作権指令が存在するからだ。今後、フェイスブックにもこれが当てはまる可能性が指摘されており、そうなれば、欧州27カ国全てでニュースをリンクするのに料金を払わなければいけなくなる。
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