“高齢”免許を定年制にすべきか? マツダ福祉車両から見るミライ:高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)
裁判の進捗状況に怒りを覚えた方も少なくないのではないか。「上級国民」という流行語を生んだ、池袋暴走事故を起こした旧通産省工業技術院の元院長飯塚幸三被告(89)の態度である。在宅での起訴となり、供述ではペダルの踏み間違いを認めていたにもかかわらず、裁判に入るや供述を覆し、クルマの故障を訴えだしたのだから、国民の感情を逆なでしたことは間違いない。
高齢者は実刑を科せられなくなる?
そしてこの池袋暴走事故の裁判の結果、例え飯塚被告に実刑が科せられたとしても、高齢を理由に収監しないのではないか、という見方が広がっている。高齢犯罪者の場合、認知症や病気を理由に刑の執行停止が採られることは珍しいことではなく、海外でも一定の範囲内で、そうした軽減措置が導入されているところは多い。
だが高齢ドライバーが重大な事故を起こしても、高齢ゆえ実刑を逃れるのであれば、危険なドライバーを野放し(事故により免許取り消しにはなるだろうが)にしていることになる。あおり運転同様、危険なドライバーは事故を起こす前に免許を取り消し、悲惨な交通事故を未然に防ぐようにしなければならなくなる。
認知機能が衰えていなければ、責任能力を問われることはないのが一般的だ。もし判断するだけの認知機能が確保されているのなら、身体能力に問題があって運転が困難な状況であったとしても、交通事故を起こした際の責任は十分に問えるはずだ。実刑判決が出たら、即座に収監されなければ、世論は再び飯塚被告を責めるだろう。
そもそも日本の法整備が遅れていて、高齢者が運転するという事態を想定していなかったところに問題がある。命に関わる事案である、大至急法整備を進めるべきではないだろうか。
免許を保持して運転しているということは、運転者としての責任を負わなければならない。高齢を理由に責任が逃れられるのであれば、そもそも免許を保持してクルマを運転すべきではない。免許を与え続けた公安委員会、警察庁に責任はないのか問いたいところだ。
クルマの運転という行為を軽く考えてしまいがちなのにも問題がある。運転免許を取得すると、「運転をする権利」を得たという意識になり、交通事故さえ起こさなければいつまでも運転できると思い込んでいる(あるいはそんな感覚すらない)ドライバーが大半なのではないだろうか。
体力の衰え、筋力や反射神経の低下を感じてはいても「運転さえできれば移動できる」と、クルマに頼り切ってしまうところに、判断の甘さがある。それが、すでに認知機能や判断力も低下している証拠なのだ。
運転の権利だけを主張するのはなく、運転者の責任を負うからこそ、公道でクルマは運転できる。それと同時に、運転者には運転機能を維持する努力を続ける義務もあるのではないだろうか。
自動車教習所の卒業生を増やすよう指導し、クルマの免許取得を奨励してきた政策にも問題がある。自動車産業の発展を優先してきたツケが回ってきた感は否めない。
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