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潰れかけだった小僧寿しが今、大復活を遂げている真の理由古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

“潰れかけ”の状態にまで追い込まれていた小僧寿しが、今大復活を遂げている。2月19日には債務超過を解消したことで疑義注記の記載が解消され、経営危機状態も脱した。その要因はなぜだろうか。

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 小僧寿しといえば、ドラえもんの容器に入った寿司のCMが印象的ではないだろうか。そんな小僧寿しは1964年に「スーパー寿司・鮨桝」創業をルーツにもち、79年には日本における外食産業でトップとなった企業でもある。


小僧寿し(採用ページ)

 しかし、テークアウトによる寿司の販売というビジネスモデルを頑なに守り続けた結果、小僧寿しはそこから長きにわたる暗黒時代に突入することになる。2000年に入ると、消費者の嗜好(しこう)が回転寿司チェーンにシフトし、その反動でテークアウト寿司専門の小僧寿しは徐々に売り上げを落としていった。回転寿司チェーンによるテークアウト寿司の提供も、いっそう小僧寿しの存在意義を怪しくしていったのである。

 11年には200億円あった売上高も、15年には60億円にまで減少。1991年に記録したチェーン総売上1000億円の水準からすれば、16分の1以下にまで落ち込んだ。2018年には債務超過状態で買収した企業におけるのれんの減損処理が直撃し、小僧寿し自体も10億円を超える巨額の債務超過に陥るという事態に陥る。

 この債務超過が仇(あだ)となって、小僧寿しは東京証券取引所から継続企業の前提に関する疑義注記(通称GC注記)の記載を求められることになる。つまり、当時の小僧寿しは事業が継続できない可能性、つまり“潰れかけ”の状態にまで追い込まれていた。

 しかし、そんな小僧寿しが、今大復活を遂げている。2月19日には債務超過を解消したことで疑義注記の記載が解消され、経営危機状態も脱した。その要因は何だろうか。

コロナで黒字転換も、「持ち帰り」は赤字のまま

 小僧寿しの業績を確認していこう。11年12月期以降、小僧寿しは最終益ベースでは20年12月期まで一度も利益を出せていなかった。しかし、コロナ禍中における業態のリブランディングが新たな生活様式にピタリと当てはまったのである。

“万年赤字”小僧寿しに変化の兆し? オコスモ作成
“万年赤字”小僧寿しに変化の兆し?

 ここで注意すべきは、コロナ禍中においても、小僧寿しをはじめとしたテークアウト寿司セグメントは3900万円の赤字となっている点だ。つまり、この度の黒字は、「小僧寿しで寿司を持ち帰る人が増加したこと」が主要因ではない。それでは、真に小僧寿しを黒字に導いた事業は何だろうか。

【訂正:12:00 初出でテークアウト寿司セグメントの赤字額が誤っておりました。お詫びし、訂正いたします。】

 それは「デリバリー事業」である。

 小僧寿しは、コロナ前から寿司をデリバリーする体制を構築していた。これがコロナ禍中におけるデリバリー需要をとらえることに成功した。18年に出前館が「夢の街創造委員会」という社名だった頃から業務提携しており、今はUberEatsにも対応している。さらに、小僧寿しに上記の経営危機をもたらした買収会社のデリズが、20年の8月に「とり鉄」などを運営するJFLAホールディングスと100店舗のエリアフランチャイズ契約の締結に成功したことも大きい。これにより小僧寿しはフランチャイズ加盟金という、安定的な収入元を得るのに至った。

 ここで注目すべきは、減損処理したはずの買収先企業が後になって輝きを取り戻し、利益を生み出したという点である。通常、のれんの減損が発生した後は然るべき措置を経て撤退したり、それほどのシナジーが期待できない状態でも利益が出る限りは稼働させ続けたりという処遇が一般的だ。特に、小僧寿しの経営危機の原因となった企業が、今回小僧寿しを救ったのはある意味では奇跡的であり、先見の明があったともいえるのではないだろうか。

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