ユニクロ・ワークマン参入で危機 AOKIの“4800円スーツ”は起死回生の一手となるか:磯部孝のアパレル最前線(2/4 ページ)
リモートワークの普及とともに「常時オフィス出勤」というこれまでの常識が通じない現在、ビジネススーツ業界にも新しい潮流がうまれて来ている。
市場拡大はユニクロの「感動パンツ」
そもそも、ビジネススーツ業界に新風を吹き込んだのはユニクロだと思う。2014年に発売したのが、プロゴルファーのアダムスコットが監修した、夏のゴルフ用スラックス「ドライストレッチパンツ」だ。速乾性に優れ、ストレッチが効いて穿き心地も良い。しかも見た目にもエレガントな表情である事からビジネスウェアとして着用する人が増えていった。
口コミによる広がりもあって、現在の「感動パンツ」とネーミングを変更し大ヒットにつながったのが17年のこと。それまでカジュアル専業だったユニクロが本格的なビジネススーツ市場へ参入するきっかけ作りにもなった。
「感動パンツ」の穿き心地の良さを実感させたものは「新合繊」と呼ばれる素材技術によるところが大きかった。16年頃にはアパレル専門各社でも、スポーツ・アウトドアブランドが採用していた東レのストレッチ繊維「Flexskin Plus」「FITTY」「Dot Air」といった素材を使ったセットアップが多数登場した。
ユニクロの「感動パンツ」などが採用した新合繊を供給したのが東レ。その後巻き返しを図るかのように新合繊が帝人からも登場。今回のワークマンが使った「SOLOTEX」は帝人の代表格だ。日本の2大合繊メーカーによる開発競争無くして新合繊セットアップスーツの存在はない。
これら「新合繊」を使ったセットアップスーツの特徴は、肩パッドの無いアンコンタイプのジャケットと、ウエスト部分がゴムなどで伸びるパンツを組み合わせたことだ。素材から仕様も含めた軽量さと、家で洗濯ができる手軽さも人気の理由と言える。よってドレスシャツやネクタイを締めたスタイルの「タイドアップ」より、カジュアルなシャツやTシャツとの相性の方が良い。そのため”新合繊セットアップスーツ”は面接やセレモニーなどのオフィシャルなシーンでは使いにくいし、ましてや新しい職場にいきなり着ていくスーツとしてはお勧めできない。
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