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ユニクロ・ワークマン参入で危機 AOKIの“4800円スーツ”は起死回生の一手となるか:磯部孝のアパレル最前線(3/4 ページ)
リモートワークの普及とともに「常時オフィス出勤」というこれまでの常識が通じない現在、ビジネススーツ業界にも新しい潮流がうまれて来ている。
市場低迷は業界の”おごり”?
働く戦闘服としての役割を長らく担ってきたビジネススーツの歴史は古い。日本には明治維新後の洋装化の1つとして導入された。特に1872年に福沢諭吉が慶應義塾内に設立した「衣服仕立局」は日本人の洋装化をけん引した。その当時はもちろん既製品はなく、先に洋装化を取り入れたのは政府高官や一部の富裕層で、一般人が手にしたのは戦後の話である。
この歴史あるビジネススーツはフルオーダーを頂点に、既成の型紙からサイズを調整する「イージーオーダー」と、既成サンプルから手掛ける「パターンオーダー」とがある。社会的地位や装いへの強いこだわりがある人にとって、自分の体形にあった一着は最高峰のビジネススーツでもある。
ビジネススーツの既製品化が進んだ今でも、ビジネススーツ専門店ではY、A、AB、BB、Eとフィット感とシルエットが選べ、2〜9号と身長に合わせたサイズ選びを可能としている。既成品サイズと言えども、着る人の身長や体格にフットしたスーツ選びと、カジュアル専門店がXSから3XLを用意するのとでは、フィット感の選択肢が圧倒的に異なるのだ。
しかし、言い換えると既製品ビジネススーツとカジュアルビジネススーツの歴然とした実力差が、ビジネススーツ専門業界全般としてのおごりとなり、ユニクロを始めとしたカジュアルセットアップへの対策と対応が遅れてしまったのかもしれない。事実、最大手の青山商事の早期希望退職希望者は600人を超え、全店の2割にあたる160店舗を閉店する。
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