メーカー直販EC、カーシェア、EV化の三重苦 日本の自動車ディーラーは今後どうなる?:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
ここ5年ほどで、自動車ディーラーの店舗が大きく様変わりしてきている。10年に1回はリフォームなどで清潔感や先進性を維持するのが通例となっているが、このところディーラー再編に伴う建て替えと、新しいCIに沿ったイメージへの転換に向けた建て替えという2つの理由で、かなりの数のディーラーが、それまでと一新する装いを放ち始めたのだ。だが、そんな戦略もコロナ禍ですっかり狂ってしまった。
ECだけで完結する商品とクルマの絶対的な違い
テスラは、北米や中国ではほぼネットで購入手続きが済んでしまうECによる販売スタイルを採っている。日本でもネット販売に進出しているブランドもあるが、それらは現時点では極めて限定的だ。というのも日本はクルマの登録手続きが煩雑であることと、前述のように車検や点検整備などの法定点検のためにディーラーを訪れる機会が比較的多いため、ネット販売に抵抗があるユーザーが少なくないからだ。
テスラが北米市場で顧客満足度が低いという評価を受けているのは、車体の問題だけでなく、こうしたサポート体制にも理由がある。日本で完全なネット販売が普及するのは相当先になるだろう。
では自動車ディーラーはこれから先、何で収益を上げ、存続していけるようになるのだろうか。
ECはネットでクリックするだけで商品が届くのは便利で手軽だが、体験としては手軽な分だけ手応えが薄く、満足感もそれなりになる。全国から銘品をお取り寄せしても、いつかそれは感動体験としては希薄になってしまう。
その点、クルマは高額で購入にはそれなりの覚悟を伴うため、ユーザーは購入前にじっくりと検討することになる。それだけに決断に至るまでのやり取りや、情報の見せ方などで商品の魅力を伝えて競合他社との争いに勝ち、選んでもらうために、さまざまな仕掛けが必要だ。
現在のWebによるカタログページやバーチャルショールームよりも充実したインフォテインメント技術が、続々と実店舗にも導入されるだろう。それによって実車がなくてもさまざまな体験ができる機能も登場することになる。
見方を変えると、社会全体でバーチャルな世界の利用が広がることで、リアルな体験はより貴重なプレミアムな経験、刺激として価値が見出されることにつながり、クルマの価値はこれまで以上に高まることになるだろう。
クルマの価格、点検整備などのコストは上昇し、クルマは贅沢(ぜいたく)品へと回帰していくことになれば、店舗の統廃合と合わせてディーラーの収益性は改善する傾向になるハズだ。
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