メーカー直販EC、カーシェア、EV化の三重苦 日本の自動車ディーラーは今後どうなる?:高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)
ここ5年ほどで、自動車ディーラーの店舗が大きく様変わりしてきている。10年に1回はリフォームなどで清潔感や先進性を維持するのが通例となっているが、このところディーラー再編に伴う建て替えと、新しいCIに沿ったイメージへの転換に向けた建て替えという2つの理由で、かなりの数のディーラーが、それまでと一新する装いを放ち始めたのだ。だが、そんな戦略もコロナ禍ですっかり狂ってしまった。
クルマの所有、利用に合わせてディーラーも変化していく
個人所有のクルマはある時から一気に減少し、全国の保有台数は現在の6000万台レベルから大きく減っていくことになることは避けられない。
街を走る乗用車は、いずれ富裕層の個人所有高級車、庶民でクルマ好きの個人所有車、クルマが必要な人の個人所有超小型モビリティ、カーシェア車両の4つに分かれることになる。それぞれのカテゴリー別に、クルマの保守を行うディーラーに再編が進むことになるだろう。
しかも単独で自動車ディーラーとしての機能だけで運営される店舗は限られる。今後は異業種と組み合わせる複合店舗が増えていくだろう。実店舗ではどこも、別の来店機会を利用する傾向が高まっていくからだ。
クルマ+αの展開は、さまざまなケースが考えられるが、クルマだけを扱っていたのでは成り立たないディーラーが大半となるから、複合店舗に組み込まれる。現在の業態で生き残れるのは一握りの高級ブランドと、郊外で重整備なども行う総合型の大型店舗くらいではないだろうか。
超小型モビリティや軽自動車のディーラーは、これまでより規模を小さくすることで、スーパーマーケットの駐車場などに吸収される内蔵型のディーラーも登場する可能性もある。カーシェアの拠点はディーラー、ガソリンスタンド、レンタカー店だけでなく、こうした駐車場スペースの大きい大型店舗にも設定が進んでいくことになるだろう。
すでにコンビニエンスストアへのEVの充電スタンドは設置が進んでおり、今後はカーシェアの拠点としても機能していくことが十分に考えられる。
あるいは大規模マンションのような住宅エリアには、カーシェアや愛車の納車引き取りの拠点としても、簡素化されたディーラーが建設されるケースも増えるはずだ。そういった意味では、より生活に密着したサービスとして発展する可能性もある。
クルマ以上に変革が進むのが自動車ディーラー、すなわちクルマの販売や利用の現場となることは間違いない。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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