なぜ地場証券がIFAへ業態転換? 進む金融の水平分業(1/2 ページ)
証券会社の中には「地場証券」と呼ばれる存在がある。従業員は十数人から多くても50人。地域に密着して資産運用と営むパートナーというべき存在だ。しかし、地銀同様にその経営環境は悪化してきており、再編の動きが始まっている。
証券会社の中には「地場証券」と呼ばれる存在がある。従業員は十数人から多くても50人。地域に密着して顧客の資産運用をサポートするパートナーというべき存在だ。しかし、地銀同様にその経営環境は悪化してきており、再編の動きが始まっている。
動きのひとつが、証券会社からIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)への業態転換だ。転換を支援する業務を営む証券ジャパンによると、同社だけですでに3社のIFAへの転換をサポートした。
2013年1月には大徳証券がIFAのだいとく投資ビレッジ(名古屋市)へ、18年1月には飯塚中川証券がなかがわ証券アドバイザー(福岡県飯塚市)へ、そして19年5月には竹松証券が竹松投資アドバイザー(金沢市)へと姿を変えている。
「この十数年、大手証券の攻勢、ネット証券の台頭などで、地場証券を巡る環境が厳しくなっている。そんな中、地場証券からIFAへの業態転換が一つの選択肢としてクローズアップされている」(証券ジャパンの岡崎敦執行役員)
ではなぜ、地場証券はIFAへ転換を図ったのだろうか?
フロント機能とミドル・バック機能の分離
証券会社には大きく分けて3つの業務がある。顧客に資産運用を提案したり勧誘するフロントオフィス業務、商品の組成、調達、流通、決済を担うミドルオフィス業務、顧客資産の分別管理、内部管理や自己資本規制比率の管理など業務の健全性を司るバックオフィス業務だ。
ところが、昨今ミドル、バックオフィス業務の負担が増加してきた。これらはシステムが重要な業務であり、インフラ部分の投資には多額のコストがかかるからだ。日本株だけならばともかく、国債や外国株、大量にある投資信託を取り扱うコストは大きい。さらに、インターネット対応やスマホ対応もある。
そして有形無形のコンプライアンス対応コストも大きい。さらに金融庁が求める「顧客本位の業務運営」では、この秋の改定で複数の類似商品を比較しながら提案することが求められた(記事参照)。商品の品ぞろえが少ない地場証券では、これに対応するのは難しい。
「バックオフィス、ミドルオフィスのコストをまかなうためには、営業にノルマを持たせるしかなかった。これではお客様本位の業務運営ができない。そのためIFAへの業態転換で身を軽くすることを考えた」と、いち早くIFAへの転身を果たしただいとく投資ビレッジの山田明弘社長は話す。
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