「鉄道を盛り上げるボランティア」の報酬は何か 網走に学ぶ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)
JR北海道は、SL列車「SL冬の湿原号」を釧路側、「流氷物語号」を網走側と、2つの観光列車を東部で冬に運行している。しかし新型コロナの影響で「あばしりオホーツク流氷まつり」が中止。運行中止の恐れもあった「流氷物語号」の運行を後押ししたのはボランティア団体だった。その活動から、ボランティアの報酬について考える。
運行を後押ししたボランティア団体「MOTレール倶楽部」
これだけ状況が冷え込めば「流氷物語号」の運行が中止される恐れもあった。そんな中で、運行を後押しした要素の1つが、34年前に発売された名作ファミコンゲーム『オホーツクに消ゆ』とのコラボレーションだ。新作ゲームならばメーカーから援助が得られたかもしれないが、このゲームは旧作だからメーカーにメリットはない。そもそもメーカー自体が消滅している。ゲームを楽しんだ世代は40代以上であろう。
しかし訪日観光客が期待できない中、「国内の40代以上」へ訴求できれば上出来だ。乗客増にきっと貢献できるだろう。網走市や流氷が流れ着くオホーツク沿岸地域をアピールする良い機会になる。結果的に名作のチカラは強かった。ゲームの舞台を旅したいという人々が訪れてくれた。乗車記念品も売れた。鉄道ファン、旅行好き以外の「第三のターゲット」に「流氷物語号」と沿線地域が認知された。
さらに「また旅したい」という人もいて、「今年は行けないけれど来年は行きたいから第2弾を」との声も多かったと聞く。また「行けないけれど記念品はほしい」という人に向けて、乗車券の購入を条件に通信頒布も実施した。最寄りのJR窓口などで運行区間と同じ乗車券を購入して同封すると、乗車券に記念印が押されて戻ってくる。これは「流氷物語号」を応援するという主旨と転売防止の意味があった。仮に転売されたとしても、乗車券を購入してもらえばJR北海道の収入になる。「流氷物語号」を支援する目的は達成する。
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