「1日3回」が歯磨き粉市場に起こした“大逆転”とは? ライオンがしかけた啓蒙マーケティングのすごみ:消費行動の変化(3/6 ページ)
2020年、歯磨き粉市場にある大きな変化が起きた。ライオンが1日3回の歯磨きを推奨した結果、消費行動に変化が起きたと筆者は指摘する。
オーラルケア市場には「市場性がある」
メーカーマーケティングにおける戦略の肝は、市場性×戦略的優位性という公式で表すことができます。売り上げを伸ばすための市場があり、他社と差別化できる優位性を持っている企業が、顧客の支持を得て業績を伸ばせるという原則です。
オーラルケアの国内市場は約2500億円以上です。口腔ケア食品などもあわせると、全体で4000億円を超えます。同市場は、健康・美容意識の高まりを背景に年2〜3%ずつ確実に成長すると見られています。つまり、市場性がある。かなりの市場規模があり、市場成長率が高いので、ライオンがこの市場に力を入れるのは当然です。事実、19年におけるライオンのオーラルケア分野の店頭販売は、7%程度伸びました。20年はコロナの影響でこの市場がマイナスになる一方で、同社は歯磨き粉で2%増、歯ブラシは年間ではマイナスですが10月以降は5%の伸びを見せています。
ファブリックケア市場も柱の一つではありますが、こちらは競合環境も激しく、価格競争に陥りやすいという課題があります。オーラルケア市場には「具体的な効能をアピールすれば、高単価を維持しやすく、価格競争に巻き込まれにくい」というメリットもありそうです。
さらに、同社は戦略的優位性を確立するための努力もしています。それが「昼歯磨き市場の開拓」。同社の調査によると、オフィスで歯を磨きたいけれど磨けていない人が全体の22%、約400万人いることが分かりました。
同社の調査によると、1960年時点では1日2回歯磨きをする人は全体の20%程度でしたが、2016年には80%にまで増えています。それに伴って歯磨き市場も3倍に拡大しています。
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