「内輪だからいい」では済まない侮辱発言、ハラスメントが続く組織は“コミュニケーション能力が低い”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
女性タレントの容姿を侮辱する演出を提案したとして、東京五輪の開閉会式演出の総合統括クリエイティブディレクターが辞任した。「内輪のことだから」と擁護する声もあるが、ハラスメントのほとんどは「内輪」で起きた出来事だ。こうしたハラスメントや差別発言は、無意識の思い込みと、コミュニケーション能力の低さから起こっている。
だからこそ、「敬意」が必要不可欠です。階層組織の“上”になればなるほど、敬意という人格の礎になる感情を意識的に持つことが肝心なのです。
以前、私自身が関わった調査研究で、興味深い結果が得られました。
ハラスメントと職場の組織風土の関連を検討した結果、「ハラスメントの経験者が少ない職場」では、
- お互いをサポートしあう風土がある
- 意見を言いやすい、風通しがいい
- 信頼できる上司がいる
- 上司は自分を信頼してくれている
と答えた人が多くいました。
このように日ごろからコミュニケーションが取れている職場、互いに信頼できる職場では、ハラスメントが少ないことが分かりました。
念のため断っておきますが、ハラスメントは権力者だけによるものでも、上司だけによるものでもありません。ましてや異性だけではなく、同性がハラスメントを行うこともあります。
しかし、階層組織の上にいけばいくほど、権力という魔力を手にいれてしまう。ハラスメントのハードルはさがってしまうのです。
そのことを絶好調なときほど、常に自覚しておいてほしいと、心から思います。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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