日銀に“ハシゴ外し”された日経平均株価……ユニクロ・ソフトバンクG株に影響も:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
3月19日に発表された日本銀行の金融政策決定会合の結果は市場に衝撃をもたらした。その内容は、これまでETFを爆買いしていた日銀が、日経平均から「ハシゴを外した」とも取れる内容だったからだ。
3月19日に発表された日本銀行の金融政策決定会合の結果は市場に衝撃をもたらした。その内容は、これまでETFを爆買いしていた日銀が、日経平均から「ハシゴを外した」とも取れる内容だったからだ。
日銀は19日の金融政策決定会合で、これまで原則年6兆円としていたETFの買入れの記述を削除し、購入するETFの対象も日経平均連動型からTOPIX連動型に軸足を移すという方針を示した。
ユニクロ、ソフトバンクGは大打撃へ
中でも、TOPIX連動型ETFへの転換は全くのサプライズだった。現に、ユニクロを運営するファーストリテイリングを中心とした日経平均寄与度の高い銘柄が総崩れとなり、日経平均株価に組み入れられていない東証一部銘柄に買いが入る動きが市場で観測されている。
ただし、TOPIXは日銀の発表を受けて一時は指数が上昇したものの、日経平均株価の連日の下落につれ安する形で上げ幅を戻しており、トータルではネガティブな影響を市場に与えたことになりそうだ。
最も影響を受けたのは、「日経平均高寄与銘柄買い」という戦略をとっていた市場参加者だろう。これは、ファーストリテイリング、ファナック、ダイキン、ソフトバンクグループといった1株あたりの値段が高い「値がさ株」を中心に買いを入れるという戦略である。
日銀の金融政策においては、これらの株式を直接購入するわけではないものの、日銀が日経平均連動型のETFに投入した資金は結局、日経平均株価の寄与度が高い銘柄に多く流入することとなる。そのため、日経平均株価への寄与度が高い銘柄群に分散投資すれば、日経平均株価指数全体に投資するよりも高いリターンが期待できたのだ。
しかし、この度の会合によって、この戦略の前提条件はもろくも崩れ去る形となった。日経平均連動型ETFの買入れが終わることで、日経平均高寄与銘柄群は、それまでの堅調な株価を支えてきた日銀という強力な後ろ盾を失う。日銀の買いがなくなるだけでなく、日銀の買いを期待した買いまでもが期待しづらくなった。さらに、この動きに乗じて、買いから売りに転じる市場参加者も発生しやすくなっている。日経平均高寄与銘柄はわずか1日で逆風にさらされることとなったのだ。
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