菅政権発足から日銀のETF爆買い急失速、それでも不透明な45兆円の出口戦略:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
日本は「一国の中央銀行が株を買って景気刺激策とする」という、世界でも類を見ない特殊な金融政策を実施している国である。しかし、菅義偉政権発足以降、日銀のETF買い入れが急激に鈍化している。
日本は「一国の中央銀行が株を買って景気刺激策とする」という、世界でも類を見ない特殊な金融政策を実施している国である。
コロナ禍に見舞われた2020年には、日本銀行が日本の株価指数に連動するETF(上場投資信託)をわずか4カ月で2兆5000億円も“爆買い”し、コロナショックにおける株価下落局面を下支えした。
しかし、菅義偉政権発足以降、日銀のETF買い入れが急激に鈍化している。
安倍氏が首相を務めていた上半期中は、年間12兆円のETF購入枠を最大限に消費するペースで買い付けが進んでいたが、菅政権発足後は買入れの絶対額が低下した。年明けには、一回あたりの買い付けが501億円と、ピーク時の4分の1にまで買いに消極的となっている。そして、2月に至っては、まだ一度も日銀のETF買い付けが実施されていない。
なぜ、日銀はETFの買い入れに消極的になったのだろうか。そのためには、まず日銀が市場でいかほどの影響力を有するに至ったかを確認しておく必要があるだろう。
重くのしかかる“45兆円分”の株式
ところで、日本で最も株を保有している市場参加者は誰だろうか。日本最大の上場企業、トヨタ自動車の創業一族で社長である豊田章男氏だろうか。
正解は、「日本銀行」である。ニッセイ基礎研究所の井出真吾上席研究員が試算したところによれば、日本銀行は20年11月25日の時点で、推定45兆円ものETFを保有し、東証一部上場企業全体の時価総額のうち、約7%を占めるETFの持ち高となっていることが明らかとなった。これにより、従来まではトップの間接保有率となっていたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を上回ったとみられている。
しかし、ETFはあくまで「投資信託」であるため、大株主の欄に「日本銀行」という文字が直接掲載されることはない。実際には、ETFの資産を管理している「日本トラスティ信託口」「日本マスター信託口」といった各種信託銀行の口座に持分が分散していると考えられている。
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