「MBO導入で圧倒的成長!」──なぜ失敗? 良かれと思った目標管理の落し穴:人事施策のよくある誤解と失敗例(3)(1/4 ページ)
MBOを導入する企業は多いものの、全ての業種・職種に合致した評価方法ではありません。本記事では、むやみにMBOを導入することで起こり得る問題点に言及したのち、どのようにMBOを導入するのが望ましいか、解説します。
あらゆる人事施策には、メリットとデメリットがあります。他社にとっては良い施策でも、自社で導入してみると合わなかったということも起こり得ます。本連載では、筆者のコンサルティングの経験から人事施策に関するよくある誤解と、その原因や対策について事例を交えてお伝えしています。
今回は、目標管理制度(MBO)に対する誤解を紹介します。
MBOに対する誤解〜インターネット関連企業F社の事例〜
F社はミュージシャンなどから依頼を受け、ファン向けのWebサイトの制作や運用を行っている50人ほどの企業です。F社の社長は親会社にて高い営業成績を上げており、その実績を買われ、子会社であるF社の社長に就任しました。
自身が営業マン時代に高い目標を自ら設定し、それを達成することで成長し、評価されてきた経験から、「社員全員が高い目標を目指すことでやる気になり、会社業績も向上する」と考え、F社でも全員を対象に目標管理制度(以下、MBOと略)を導入しました。
導入後は人事制度プロジェクトを立ち上げ、毎期末に1カ月以上をかけて各社員の来期の目標について「上位の目標に沿った内容であるか?」「測定可能な目標であるか?」などのチェックを行い、本人や上司とすり合わせを行いました。
しかし、設定した目標を達成できる社員は少なく、F社の業績も上がったり下がったりで安定しません。
業績が厳しい時は社長自身が大手クライアントに営業し、案件を獲得することで赤字を回避しているような状態です。
「社員自身に目標を設定させる」→「社員のやる気が高まる」→「目標に向かって行動し、成果が上がる」という効果を狙っていたにもかかわらず、なぜこのような状態になるのでしょうか?
MBOが広まった理由
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