日本にとって“渡りに船”だったのか? LINE騒動はゴタゴタ中:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
LINEの個人情報が、中国からアクセスされているとして大騒動に。多くのユーザーは以前と同じように使っていると思うが、3月に合併したヤフー側はこの騒動をどのように受け止めているのだろうか。
ヤフーにとって悪い話ではない
これは筆者の想像だが、LINE社が中国とつながっている事実がメディアで騒ぎになれば、関係者の間でセキュリティ意識が高くなる。このように考えると、今回の一連の騒動はヤフーにとっては悪いことではなかったのかもしれない。
これからはヤフーや日本政府による、LINEアプリに対する管理体制が強まるのだろうと筆者は見ている。それは、この問題が発覚した後に、Zホールディングスグループが立ち上げた外部有識者による特別委員会のメンツからも感じ取れる。ヤフーに近い人たちや、日本の国家安全保障局(NSS)に20年4月に発足した経済・安全保障問題を担当する「経済班」に近い人物なども入っている。そういう意味からも、本当の意味でLINEアプリを国産アプリにしていくはずだ。
ヤフー側の幹部に、筆者の印象をそう伝えると、こんな答えが返ってきた。
「日本だけに閉じこもるということはなく、グローバルな企業になるべく、データのガバナンスを整備していくことになります。LINEは、日本の法律に従いながら、サービスを展開して、世界を目指すということです」
LINEアプリは日本では圧倒的に人気だが、海外ではあまり知られていない。21年1月時点での人気メッセンジャーアプリをみると、トップはWhatsAppだ。Facebookが所有するアプリで、世界で20億人が利用している。2位は同じくFacebookが運営するFacebookメッセンジャーで、13億人が使っている。3位は中国のWeChatの12億人、4位も同じく中国のQQで6億人が使っている。次いで、強力なメッセージの暗号化を喧伝しているTelegramの5億人となっている。世界で1億6700万人のユーザがいるLINEの存在感は低い。
さらにこの幹部は言う。「中国との関係を遮断するのは大前提です。韓国側の体制はこれから徐々に縮小していく。ただ、まだ韓国側が中国とどういう関係にもっていくのかは、非常に警戒しています。中国との関係を切れないのなら、日本側(ヤフー側)も考えないといけない」
この問題は米中の関係にもつながっていく。米政府は、中国のハイテク企業などと「デカップリング」、つまり、分離していこうとしている。少し前から話題になっている中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)をめぐる問題もその例だし、半導体の分野でも中国企業への禁輸制裁措置をとっている。とにかく、中国のハイテク分野との関係に非常に神経質になっている。そんな流れの中で、同盟国である日本の国民の半数が使っている通信アプリのデータに中国側(そして韓国も然り)がアクセスしていたのはシャレにならない。
関連記事
- 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - ルネサス火災の真相は? セキュリティ関係者が疑っている「こと」
半導体大手「ルネサスエレクトロニクス」の那珂工場で火災が発生した。火災の原因はまだ明確になっていないが、セキュリティ関係者の間で疑っていることがある。それは……。 - いずれはNTTが買収も? 楽天・郵政タッグに透けて見える、「楽天モバイル」の“賞味期限切れ”感
楽天と日本郵政が資本提携も、提携による具体的なメリットが見えづらく、実質的には窮地の楽天モバイルに対する国からの資本注入ではないかと筆者は指摘する。当初は業界の閉塞的な状況を打破することを期待され、鳴り物入りだった楽天モバイルは、今後どうなってしまうのか。 - 「鬼滅の刃」は世界で通用するのか
『鬼滅の刃』が大ヒットしている。その人気は国境を越えて、アジアだけでなく、欧米でも注目を集めるかもしれない。それにしても、なぜ外国人にこの映画が受けているのか。その秘密を探ったところ……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.