21卒が定年退職するころ、労働市場はどうなる? データから考える、「定年」の在り方:「仕事卒業日」からキャリアを逆算する(2/5 ページ)
コロナ禍のさなか、就職活動をした2021年卒の学生たちが新入社員として働き始める。彼らが定年を迎えるころ、労働市場はどうなっているのだろうか。そのころ、定年という概念はどうなっているのだろうか。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表した将来推計人口によると、2064年の日本の人口は8903万6000人。2021年の推計人口が1億2483万6000人ですから、今より3580万人も人口が少ない計算です。割合で示すと、28.7%も減少することになります。
この表は、総人口を基にしているため、生まれたての赤ちゃんも含まれた数字です。実際の働き手として見なされる生産年齢人口(15〜64歳)ベースで見ると、減少率はさらに大きくなります。
減少率は、4割近くに及びます。総人口比で3割近く、生産年齢人口比で4割近くも母数が減少しているのが、いまから43年後の労働市場の姿なのです。
次に、この数字を基に有効求人倍率(季節調整値、以下同じ)がどう変化するかを見てみたいと思います。有効求人倍率とは、求職者1人につき何件の求人があるかを示すものです。仮に有効求人倍率が0.5だとすると、求職者1人につき0.5件の求人しかないことになります。有効求人倍率の値が大きくなるほど求職者有利の売り手市場、小さくなるほど採用企業有利の買い手市場となります。
厚生労働省が発表した2021年1月の有効求職者数は193万6016人です。表1の結果を用いて、この値が総人口比と同じく28.7%減少したとします。有効求人数の213万5199件はそのまま変わらないとすると、現在の有効求人倍率である1.10は以下のように変わります
参考までに、1.55という有効求人倍率は、コロナ禍の影響を受ける直前、労働市場がまだ売り手市場と呼ばれていた2019年12月の値と同じです。
次に、表2の結果を用いて2021年1月の有効求職者数が、生産年齢人口比と同じ37.7%減少した場合の有効求人倍率の値を算出してみたのが次の図です。
2019年1月に記録した、同年の最高値1.64を大きく上回る1.77となりました。世の中の求人数がコロナ禍発生前の水準に遠く及ばない状態でこの値です。では、コロナ禍が発生する前、売り手市場と呼ばれていた2019年の求人水準に戻った場合はどうなるのでしょうか。
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