日本進出7年で売上200億突破のアンカー・ジャパン、“成功の裏側”と多ブランド戦略の意図:家電メーカー進化論(7/9 ページ)
Ankerグループは2011年創業。13年設立の日本法人は初年度売り上げ約9億円、18年には200億円超と急成長を遂げ、今やモバイルバッテリーの代名詞ブランドとなった。また家電、オーディオデバイス、モバイルプロジェクターなど、次々と新ブランドを展開。急成長の秘密と多ブランド展開の戦略と展望を、猿渡歩COOに聞いた。
――そもそもバッテリーブランドとして認知されていたAnkerが、家電を開発したのはなぜなのでしょうか
Ankerグループのコーポレート・ミッションは「Empowering Smarter Lives」。ハードウェアを通じて人々の生活をスマートで豊かにするというものです。ロボット掃除機は家事の手間を減らすことで時間を創出し、生活を豊かにするという点でミッションに合致しています。
このコーポレート・ミッションを達成できる製品であれば、特にジャンルは限定していませんが、我々が持つノウハウで生活を豊かにするために何が作れるかを追求したところ、イヤホンやロボット掃除機、プロジェクターになったということです。
ただし我々は、やみくもに製品を増やしたいのではなく、そこには「生活」に根差した製品という軸があります。先ほどコーポレート・ミッションの説明で「ハードウェアで……」とお話したとおり、枕や洋服を作る予定はありません(笑)。
Eufyブランドのロボット掃除機で最上位モデルとなる「Eufy RoboVac L70 Hybrid」は、レーザーナビゲーションを搭載し、吸引掃除と水拭きが可能ながら、販売価格は5万円台。さらに吸引掃除のみのモデルは、1万円台から販売されている
――とはいえ、これまでと全く違うジャンルだと、例えばロボット掃除機などは、すでに知名度の高いライバルも存在します
ここは私個人の考えをお答えしますが、ハードウェアのジャンルにも競争相手が多いレッドオーシャンと新規開拓してくブルーオーシャンがありますが、レッドオーシャンで勝つ方が効率が良いと考えているのです。
その理由として、ハードウェアで新規参入する場合に多い失敗に「ブルーオーシャンだと思って飛び込んだらそもそも海なんてなかった」というものがあります。画期的で便利な製品でも、結局は市場が熟成されるほどのユーザーニーズがない場合があります。市場がないと、どうにもならないんです。
一方、イヤホン市場はすでに多くのライバルがいますが、我々は後発参入ながらAmazon.co.jpでシェア1位を取っています。市場があるところでしっかり勝っていくことが大切だということです。
やり方は非常にシンプルで、同じ品質のものをより安い価格で提供するか、同じ値段でより良い製品を開発することです。販売チャンネルが同じなら、これで売れるはずだと。あとはプロモーションで、差を補う。最初にお話した4Pを愚直にやっていけば勝てるはずだと考えています。
ただし重要な前提として、我々は伸びている、もしくは今後伸びるマーケットにしか製品展開をしません。例えば、少し前までAnkerはmicro USBケーブルでトップシェアを獲得していましたが、現在はUSB Type-Cが取って代わったため、micro USBケーブルの新製品は一切作っていません。過去に1位を取ってもしがみつくことなく、市場のトレンドに合わせて即座に対応します。これはより便利な製品をより多くの人に届けるためにも、企業として必要な判断だと信じています。
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