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なぜゼブラの「ブレン」は2年間で1000万本売れたのか こだわったのは”気が付かないストレス”の解消デザインは1本の棒(2/3 ページ)

発売初年度に500万本を売り上げたゼブラの「ブレン」。油性ボールペンの主力商品開発が課題だった同社が着目した”気が付かないストレス”とは

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「気が付かないうちにストレス」筆記時のブレに着目

 新しいペンのコンセプトとして着目したのが「筆記時のブレ」だ。同社ではペンの構造に関する研究にも力を入れていて、ブレンの開発前から筆記時の振動に関する研究を進めていた。

 もともとボールペンの主流は「キャップ式」だったが、使い勝手の良さなどからペン上部をノックしてペン先を押し出す「ノック式」へと変化していった。キャップ式は構造上内部の部品をホールドできるが、ノック式は必要なパーツが多くペン芯をスライドする動きもある。そのためどうしても内部に隙間ができてしまい、紙とペン先が接触するとその力で微細な振動が発生していた。その振動がペンを持つ指に伝わることで、気が付かないうちに体にストレスを与えていたという。

 同社がボールペン購入時に重要視する項目を調べたところ、52.5%が「ストレスなく書ける」と回答。そこで、潜在的にストレスを与えていた「筆記時の振動」を抑制するペンの開発に乗り出した。

 同社はこの振動を防ぐためペンの機構を見直し、ペン芯の先端をホールドする部品を搭載。中芯は、しなりを小さくするため専用のものを開発した。また、各パーツの隙間をなくしたり、グリップ内の重りで重心を下げたりと、ブレを抑制する工夫を施した。


従来のペンと比較しても1本に使用するパーツが多い

 デザインは初めて外部のデザイナーを採用した。これまで同社の製品デザインは社内の部署が担当していたが「これまでにないボールペン」として訴求するため、デザイナーの佐藤オオキ氏が代表を務めるデザインオフィスnendoが担当した。

 樺島氏は、ブレンのデザインを「1本の棒」だと説明する。「これまで筆記具のデザインは『握りやすい』『ノックしやすい』という点を訴求する”足し算”のデザインが多かった。ブレンはそこからの差別化を図り、引き算の考えで機構が直接見えないようなデザインにこだわった」

 nendoと社内の開発チームで何度もデザイン案を改良し、握りやすく、長時間使用しても疲れにくい形状を完成させた。また、全体的につなぎ目がないシームレスなデザインと、グレーや白といったシンプルなカラーリングを採用し、男女問わず利用できるよう工夫した。


試作品の数々。右が機構のみを取り入れたもので、太さやデザインを改良して左のデザインに仕上げた

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