中国でビジネスをしようと思ったら、あるあるのリスク:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
中国に進出している海外企業が、現地で混乱に陥っている。米スポーツ用品大手のナイキ、スウェーデンの衣料品大手H&Mなどは批判を浴び、SNS上でボイコット運動も。何が起きているのかというと……。
ボイコットなどの憂き目に
中国市場を手放したくない欧州各国にとって、転機となったのは20年の香港国家安全維持法の制定が一つにはある。イギリスとの国際的な取り決めを無視して強硬な政策を実施したことで、欧州全体で中国への不信感が高まった。それに合わせて、ウイグル族の人権問題にも関心が高まった。
それでもいまだに欧州で影響力の強いドイツは強硬な姿勢を見せられない状態にあるが、欧州全体の空気からそうも言っていられなくなっていくだろう。
米国では中国への締め付けを強めており、トランプ時代のような関税合戦は起きないだろうが、デカップリングは続くことになる。そうした混乱が、世界的な貿易にも影響を及ぼすことになるのは間違いないだろう。
それでも現時点で、巨大市場を持つ中国を無視するわけにはいかない企業も多い。そういう企業や、サプライチェーンで関連会社や子会社が中国と絡む企業は、ここまで見てきたような政治的・国際情勢的なリスクに目を光らせておく必要があるだろう。さもないと、ボイコットなどの憂き目にあうことになる。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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