ホンダの「世界初」にこだわる呪縛 自動運転レベル3に見る、日本の立ち位置:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
以前から予告されていた、レベル3の自動運転機能を搭載したホンダ・レジェンドが、いよいよ3月に発売となった。しかし発売を心待ちにしていた高級車好きにとっては、少々期待外れの内容だったかもしれない。というのもレベル3の自動運転が極めて限定的であり、なおかつ販売も極めて限定的だからだ。
サービスとエンジニアリング、マニュファクチャリングは分業されるべき?
かつてトヨタの豊田章男社長が、「トヨタは自動車メーカーからモビリティ・サービス全般を手掛ける会社になる」と宣言したのは、完成車メーカーとしてだけでは、この先のビジネスにおいて最終的にユーザーに選ばれる存在になり続けることはできないという危機感を表したものだ。しかし、すべてを自社でまかなうことにもリスクは存在する。果たして製造業だけでなく、ソフトウェア開発も含むサービスを網羅して提供することが最善の進化なのだろうか。
先日、半導体メーカーで自動運転用コンピュータでも最先端技術を誇るNVIDIAが、ダイムラーグループと自動運転分野で協業し、クルマの販売後もコネクテッドサービスで得る収益を分配する契約を結んだことが報道された。これは完成車メーカーと半導体メーカーや自動運転ソフトの開発会社が、対等な関係になったことを意味している。今後、単なるサプライヤーと完成車メーカーの関係性から変わっていく可能性を感じさせる。
自動運転がレベル3からレベル4になると、運転の主権はシステムに移行する。こうなった場合、万が一交通事故が起こった際に、刑事上の責任を誰が負うのかという問題が必ず起きる。車体から自動運転技術まで1社による供給が成されていると、当然完成車メーカーに責任が及ぶことになるだろう。そんな事態を回避するためにも、分業であることが望ましいはずだ。
完成車メーカーには、モビリティサービスを展開する企業の下請けに甘んじる存在になってしまうのでは、という危機感が存在するのは理解できる。しかし、クルマは家電やスマホとは違う、さまざまなリスクを抱えた機械である。それでもドライバーが最大のリスクを受け入れてきたからビジネスが成り立っていた。しかし、自動運転によって完全に完成車にリスクが集中し、万が一システムに欠陥でもあり被害が生じたら、たちまち存続が危うくなってしまうだろう。
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