「えっ、この絵が1億円?」……今更聞けないNFTバブルのヤバい裏側:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
世はまさにNFTバブルだ。トップ画像を飾るこのアヒルのイラスト「perfection」は、WAVESという暗号資産のブロックチェーン上でちょうど100万ドル、日本円にしてなんと1億円以上の価値で落札された代物である。
つり上がる価格、“自作自演”に注意
さらに、NFTの取引の場を提供するプラットフォームの多くは相場操縦的な行為への防衛策が不十分である場合も多い。つり上っているNFTの価格については、少数の主体が意図的に作り出した疑いもぬぐえないのが現状だ。
NFT取引を巡っては、“なぜこんなものに◯◯円もの価値が?”という場面に出くわすことがある。しかし、その感覚は間違っていないかもしれない。
なぜなら、このようなマーケットプレイスは本人確認(KYC)が十分になされているとは言いがたいからだ。現状、一人の大金持ちが複数のアドレスを保有し、一方のアドレスからもう一方のアドレスに向けて“入札”してしまえば、どんなNFTでも実質負担ゼロで何億円もの取引事例を作ることができる。
これが株式のような有価証券の場合、金商法159条第1項の「仮想売買・馴れ合い売買」として処罰される恐れがある。これは同一人が、権利の移転を目的とせず、同一の有価証券について売買を相対させることで、あたかもその値段で売買が活発であることを装うことができるためである。
しかし、NFTの法整備は追いついていないのが事実で、本当に自作自演の仮想売買を行ったとしても、それが違法であるかは定かではない。それだけでなく、アドレスの保有者と本人確認情報がひも付けできなければ、NFTのマーケットプレイスがそのままマネーロンダリングや脱税の温床となってしまう可能性がある。
先のチューリップバブルでは、チューリップの球根で家が買えるなど、明らかに異常な価格が群集心理によって肯定されたこともある。しかし、現代におけるNFTについては作られたバブルである可能性もぬぐいきれず、その本質的価値と市場価格のギャップについては大きな注意を払わなければならない。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
Twitterはこちら
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- なぜデジタル画像に何十億円もの値がつくのか? 熱狂するNFT市場
ゲーム内の土地がトークン化され数億円で売買されたり、デジタルアートが75億円もの値段で取引されたりと、全世界的にNFTと呼ばれるトークンが盛り上がっています。国内でNFTのマーケットプレイスを開始したコインチェックの天羽健介執行役員による、NFTに関する寄稿。 - 楽天で相次ぐ“ポイント改悪”……それでも顧客は流出しない?
楽天ゴールドカードのポイント還元率が減少するまで、あと3週間を切った。楽天がポイントにメスを入れる背景には、国際会計基準(IFRS)ではポイント還元のカットは売上高を直接押し上げる効果があるからだ。一方で、このようなポイント還元のカットが今後幾分か重なったとしても、急激な顧客離れは起きにくいと考えている。なぜなら、顧客のスイッチングコストが大きいからだ。 - 4月1日から違法「税別表記」、ahamoは値下げで“2000円代”死守
スーパーでもよく見かける「298円(+税)」といった値札は、4月1日から違法となった。このような税々表示は、そもそも安倍政権下で実行された二度の消費税増税の際、増税するごとに必要な、値札の貼り替えやシステムを改修する事業者負担を軽減するための措置だ。その特例措置が、3月31日をもって期限を迎えたため、4月1日から税別表記は違法となる。 - 唯一無二のアイテムをデジタル化 NFTとは何か?
ビットコインのように数えられるものではなく、唯一無二ものものをブロックチェーン上で取り扱うNFTが、盛り上がりつつある。NFTとはどのようなものでどんな例があり、どんな可能性があるのだろうか? - 盛り上がるNFT Coincheck NFT、一週間で1.2万人利用 30万円相当のカードが5秒で売り切れ
ノンファンジブル・トークン(NFT)市場が、国内でも盛り上がりを見せている。コインチェックが3月24日に開始した、NFTのマーケットプレイスは、1週間で利用者が1万2000人を突破した。 - GMOインターネット、NFT事業参入「アダム byGMO」
GMOインターネットグループは4月9日、NFT事業に参入し、NFTの売買が行えるマーケットプレイス「アダム byGMO」を提供すると発表した。アートや楽曲、著名アーティストによる希少性の高いコンテンツを用意するほか、ウォレットの提供も行う。提供予定日は未定としている。