2015年7月27日以前の記事
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サクラ革命が月数千万の売り上げ捨ててもサービス終了させたかった理由古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

大型スマホゲームのセガ「サクラ革命」が、リリースからわずか半年程度でサービス終了となる。一部で噂されるサクラ革命の開発費30億円という数字が事実であるとするならば、なぜ多額の開発費をかけたスマホゲームが、ここまで早いスピードで撤退に追い込まれたのだろうか。

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 大型スマホゲームのセガ「サクラ革命」が、リリースからわずか半年程度でサービス終了となる。スマホゲームには、一般に数億円から10億円を超える開発費の作品までさまざまあるが、本作はそんなスマホゲームの中でも、多額の開発費をかけた作品であるといわれている。


サクラ革命Webサイト

 確かに、同作のセールスランキングは45位〜500位台で推移し、4月に入ってからは1000位圏外となるなど、冴えない売り上げではあった。しかし、“大器晩成”という言葉にもあるように、始めこそ伸び悩むにしても、後に控えるコラボ企画やキャンペーン、はたまたSNS上でのバズりなどによって一躍ランキング上位に食い込む事例もなくはない。

 それでも、わずか4カ月目でサービス終了がアナウンスされたということは、実際の意思決定はリリースから2カ月ないし3カ月目の時点で検討されていた可能性が高い。なぜ多額の開発費をかけたスマホゲームが、ここまで早いスピードで撤退に追い込まれたのだろうか。


運営チームから、6月30日をもってサービス終了となることがアナウンスされている

想像以上に苦境だった?

 サクラ革命の苦境を評価するために、今回はARPUという指標を用いてみよう。ARPUとは1ユーザーあたりの平均売上高を示した指標で、スマホゲームごとの課金熱量を図ることができる。ARPUが高いほど、ユーザーはガチャなどによくお金を払っている事になる。そのため、ARPUで比較すれば、単純なユーザー数の多さや売上高にとらわれず、コンテンツの質を測ることができる。

 まず、今最も勢いのある「ウマ娘 プリティーダービー」のARPUを確認しよう。まず、ユーザー数について、ゲームエイジ総研が4月20日に発表した調査レポートによれば「ウマ娘」の直近における週間アクティブユーザーはおよそ206万人となっている。そして、同作の21年4月度における売上高は140億円程度の着地とみられている。

 これらの情報から概算される月間の推定ARPUは、約6800円だ。ウマ娘のアクティブユーザーは月当たり平均で6800円を課金していることになる。

【訂正:6/16 初出でウマ娘の推定ARPUの計算が誤っておりました。お詫びし訂正いたします。】

 一方でサクラ革命は、最もARPUが高まる配信初月のデータを見ても低調だった。アプリのセールスランキングを統計化するGame-iの推定によれば、同作の初月ARPUは推定339円となっており、サービス開始から相当期間が経過したウマ娘の半分程度で推移している。同サイトにおけるウマ娘の初月ARPUが推定2964円であることから、リリースの時点でサクラ革命はウマ娘の10倍ほども課金熱量の点で差をつけられていたことになり、想定以上に苦しい展開であったことがうかがえる。

 仮にサクラ革命の平均月間アクティブユーザーを10万人とすると、月の売り上げは平均3390万円程度になるだろう。この数字は、同作のセールスランキングの推移と、その順位における他ゲームの売上高水準と概ね一致しているためある程度の妥当性はあると考えられる。

 ここから一般的に月額でかかる運営費やサーバ費、プロモーションや広告費を控除すると、月の利益はわずか数百万円から1000万円台程度であったのではないかと考えられる。

 一部で噂されるサクラ革命の開発費30億円という数字が事実であるとするならば、上記のような構造では開発費の回収だけでも30年近くかかる計算となる。そのような試算も相まって、同作は撤退となり次のプロジェクト開発にリソースを集中させることとしたのではないだろうか。

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