「事例はない」にワクワクしよう! 日清食品を卒業した“武闘派CIO”と語る、IT職の面白さ:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 武闘派CIOの仕事論【後編】(2/4 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、3月末に日清食品を退職し、独立した喜多羅滋夫氏と、CIO Lounge 友岡賢二氏。人生100年時代、喜多羅氏は日清食品を辞めて何をしようとしているのか。次のチャレンジや、職業としてのCIOの魅力を聞いた。
友岡: AI、IoT、ビッグデータ……そういうテクノロジーが全部絡んでこそのDXだと思っています。
人間は、過去のデータや経験則に基づいて意思決定をします。でも、それは機械にも代替できる。AIで意思決定の自動化ができるようになった。それが、AI登場の一番のインパクトなんですよね。
長谷川: 小売業界の場合、人間が過去の売上データをもとに発注数を決めていたところ、コンピュータが代替する「AI発注」のような仕組みも使われ始めています。
友岡: 私が携わるエレベーターメーカーでは、メンテナンスの際に重宝されます。例えば、大きな地震が発生すると、何百台ものエレベーターが止まってしまいます。誰がどの現場をどういう順番で回ると最も早くメンテナンスが完了するかという計算は、人間よりAIのほうが圧倒的に速いんです。
筆者: 私もDXしているんですよ。
長谷川: 何をDXしてんの?
筆者: 取材の文字起こしは、これまで人がやっていました。それを今は、Rimo VoiceというAI文字起こしツールを使ってやっています。100%とまではいきませんが、8割くらいの精度はありますし、句読点までつけてくれるんですよ。
長谷川: でも、AIがそこまでやってくれるとなると、自分のライターとしてのバリューアップはどう考えているの?
筆者: 文章を書くこと関しては何かしらバリューが出せると思うのですが……。
喜多羅: 味のある文章をどうやって書くかっていうところですよね。
医師で言えば、最終的には患者さんの病気を治したり、心の不安を取り除くカウンセリングが求められているわけです。その過程、検査結果を見て、このケースはリスクが高いなどと判断する作業は、どんどんAIと協働するようになると思います。
一人の人間の仕事が全てAIに取って替わられるのではなく、仕事を階層化して見たときに、作業のレイヤーはAIに置き換えられていくと思っています。つまりDXによって人は、より本質的な仕事に注力できるようになるんじゃないかな。
「事例はない」にビビるか、ワクワクするか
長谷川: この連載に来てくれるような“改革者”も中身は普通の人間。しょぼーんとするときもあるし、しょうもないことで社長に怒られて謝ったりもする。皆さん、そういう情けないエピソードありますか?
喜多羅: 経営会議通すつもりで大見得切って足元すくわれたり、思いがけない質問をされて慌てたりといったことは普通にあります。しょぼーんとして経営会議の部屋から出てくるみたいなのは日常茶飯事。日夜、失敗してズタボロになりながらも、「しゃあない、明日頑張ろう」と切り替えます。
長谷川: 僕の場合、経営会議で否定されることはほぼない。何か言ったら通るんだけど、通った後、誰もついてきてない。少し無理めなことを上程するわけ。「よっしゃ通った、無理めをやるのはお前らや」と振り返ると誰もいない。
友岡: でも、そういうことをやらなきゃダメなんだよね本当は。みんながついてこれないかもしれないぐらいの無理めを狙わないと面白くない。
喜多羅: 石橋をたたいて渡るような話をしたって何も面白くない。それはわれわれでなくてもできるわけですから、「自分しかできない仕事って何なの?」という自問自答は常にありますよね。
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