「事例はない」にワクワクしよう! 日清食品を卒業した“武闘派CIO”と語る、IT職の面白さ:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 武闘派CIOの仕事論【後編】(3/4 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、3月末に日清食品を退職し、独立した喜多羅滋夫氏と、CIO Lounge 友岡賢二氏。人生100年時代、喜多羅氏は日清食品を辞めて何をしようとしているのか。次のチャレンジや、職業としてのCIOの魅力を聞いた。
長谷川: ITって、別に僕らが何か発明をしてるわけじゃない。誰かが発明したものをわれわれは採用している。そのいち早く度合いですよね。日本企業によくある「事例はあるのかね」ではなく一目散に行く。そうすることで、やはり競争力は変わってきますよね。
無理めなギリギリを狙うと、当然リスクが伴います。失敗はいいけど、会社が傾くほどズドーンとコケてもいけない。その境目を嗅ぎ分けて、無理めのギリギリを行ってヒリヒリする感覚が僕は好き。
友岡: 「日本で初めてです」といわれてビビるかワクワクするかの違いだよね。
長谷川: 誰かがやってるともう興味ない。それくらい前のめりでいきたいですよね。
友岡: いち早く採用して、広く知見を公開し、いいものを日本に普及させたいんだよね。ベンダーではなくパートナーと呼びたいんだけど、そういう人たちと日本のために運命共同体でやっていくんだって。それは、ベンダーと客という関係性ではない。すごくいい関係だと思う。
他人の作ったルールを捨て、自分にしかできない仕事を
長谷川: ところで、日清食品を辞めたはいいけど、これからどうやって暮らしていくの? 家に100年分くらいカップヌードルがあるなら大丈夫かもしれないけど。
喜多羅: 自分のやりたいことを考えたときに、やっぱり「自由」って大事だなと思ったんです。
これまでも、日清食品のCIOとしていろんなメッセージを発信をしてきました。もちろん、日清食品の考えと自分の言いたいことがズレていたわけでありません。でも、あくまでも社を代表して言っているわけで、自分が本当に言いたいことを思いっきり言えていたかっていうと、そうではないですよね。
現実問題、私も55歳なので、今後60歳、65歳と節目節目で、プロジェクトを早めに終わらせないといけない、途中で抜けないといけない、継続性がない。そう考えたとき、私も自分のプラットフォームを持って、やりたい仕事に腰を据えて取り組んでいこうという結論に達しました。結果を出すために思いっきり働きたい。それを阻害する要因は、全て自己責任で排除していきたいなと。
長谷川: 1日8時間とかいう誰かが決めたルールの中で生きていくんじゃなくて、自分が求めるアウトプットを出すためならどこでどう働いてようがどうでもいい、ということですね。
まずは向こう3年、どんなふうに働いていきたいですか?
喜多羅: 4月からは自分の会社、「喜多羅株式会社」という名前でやっていきます。まずは、企業のIT活用や生産性向上に資することをやっていきたいです。そして、この国の未来にも貢献していきたい。政府や省庁関連で私に協力できるところがあれば是非やりたいと思っています。
また、産業を動かしていくのは人です。これからのIT業界、日本の産業を引っ張っていくリーダーを育てていきたい。いわゆるお金をいただく教育プログラムではなく、その塾に入るために自分の熱い思いを論文10枚で語るぐらいのハードルの高い教育機関を運営できないかなと。卒業後もそこが一つのコミュニティーとなってお互いに切磋琢磨し合えるような。
われわれ武闘派CIOも、そろそろ真剣に次の世代を育てていくべきだと思っているんです。
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