バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略:どう立て直す?(3/6 ページ)
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。
大型施設を引き受けた「大江戸温泉物語」
経営不振となった施設の中には引き受け先があらわれるケースもあると先述したが、温泉街からすればある種“救世主的存在”ともいえる引き受け先の多くが全国チェーンのブランドだ。
その一例として「大江戸温泉物語」を展開する大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ(東京都中央区)が挙げられる。鬼怒川温泉には同社の施設が2店舗あり、いずれも従前の大型温泉施設を引き受けリブランドして営業している。
それらの施設は往時であれば宿泊料数万円といった高級施設だっただけに、それなりの設備を擁している。同社はそのような施設を活用し、格安をウリに集客する。団体から個人へと前述したが、大規模施設だけに相当の集客力が必要だ。
大江戸温泉物語のマーケティング推進部次長の前原孝行氏は「大型のリブランド施設は全国各地に点在するが、いずれも特徴的なのは温泉施設とダイニングの徹底したリニューアル」と語る。一方で「客室案内や部屋食の個別サービスをやめ、お客さまが必要とするサービスのみに特化したことで低料金が実現できた。鬼怒川温泉の施設も同様にして高齢者やファミリー層をターゲットとし大枠でご納得いただけているようだ」と話す。
投資の回収と集客のツボを徹底して研究し実行していると分析できるが、コロナ禍は例外としてもその集客力はすさまじく、平日にもかかわらずチェックイン時刻前からロビーには人々があふれる。
個人や小規模のグループ客が多くを占めるが、かつて仇となった“大きなスケール”を活用するエンターテインメントや新たな温浴施設など、個人旅行者のニーズを満たする努力を怠らない。中でもゲストの人気を博するのがブッフェレストランだ。「大江戸温泉物語といえばバイキング」といわれるほど、食材やメニュー数にはこだわりを見せている。
この仕組みを作ったのが同グループの最高料理顧問である高階孝晴氏だ。「グループ全体で大量に仕入れていることからハイコスパなメニューが提供できる」と同氏はスケールメリットを語る。また「会場が混雑しないような動線や料理の温度管理から見せ方まで日々研究している」と自信をにじませる。
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