バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略:どう立て直す?(4/6 ページ)
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。
草津温泉と湯畑の整備
日本有数の人気温泉地として抜群の知名度を誇り、コロナ禍前の2019年度には327万人以上が訪れた群馬県草津町の草津温泉はどうなのだろう。
草津温泉に詳しい旅行ライターの南潤氏によると「江戸、明治期から中小の旅館が湯畑周辺に集まっていたため、大型ホテルを立てる余地がほぼなかった」といい、結果として「湯畑周辺(草津中心部)に大型ホテルが少なく情緒ある温泉街が残った」と指摘する。その上で「団体客を見込んで成り立ってきた(鬼怒川温泉のような)大型ホテルの多い温泉地が、団体客の減少により厳しくなった」と話す。
そもそも観光地としての潜在能力が高かった草津温泉であるが、同氏は「10年ほど前までは廃れた雰囲気が漂っていた湯畑周辺が整備され、街のランドマークとして一新された」ことも特筆すべき点として挙げる。
結果として、夜も出歩く観光客が増加、カップルや女子旅、家族連れも安心して温泉街を楽しむ光景も印象的だ。その一方、温泉街全体して施設の老朽化も気になる点だとし、宿そのものの快適性もこれからの温泉街のポテンシャルを高める必須条件といえよう。
湯畑を整備した草津温泉の例のように、やはり温泉地にとって街全体のイメージや魅力は重要だ。“旅は五感”といわれるが、視覚という点でいえば温泉街の風情や景観はダイレクトに旅行者へ入ってくるだけに温泉地の存在価値をも左右する。
鬼怒川温泉のある旅館経営者は「廃墟という光景はお客さまから苦言を呈されることもある」とし、「今後解決しなければならない重要な問題」とも語る。他方、温泉関係者は「変化するお客さまのスタイルに結果として適応できなかった」「魅力ある温泉街を造っていこうという意気込みなど、温泉地全体として取り組む力が弱かった」と本音を漏らす。
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