「5兆円や6兆円で満足する男ではない」と孫社長 金の卵の製造業とは?(3/3 ページ)
20年度に4.99兆円という国内最大の純利益を出したソフトバンクグループ(G)は、いまや創業時に目指した企業の姿に近づいたのかもしれない。この利益額は、日本企業として歴代最高だ。さらに世界に目を向けてもグーグル持ち株会社のアルファベットの2020年12月期の利益を上回るなど、GAFAに匹敵する規模となっている。
金の卵の製造業になる
上がるか下がるか分からない株式相場に依存せずに、継続的に「兆」で数えられる利益を生み出すこと。それが孫氏が次に目指すものだ。「金の卵の製造業になる」とそのイメージを話す。
SVFは、上場を控えたレイターステージのベンチャー企業に大規模な投資を行い、上場によって利益を得ていくというビジネスモデルだ。そのためには、秀逸な企業の目利きとともに、継続的に投資先企業を上場に導く必要がある。
「創業者が生み出して、我々が途中から資金などで応援していく。株式公開のラッシュをグループで作っていく」(孫氏)
そのために、SVFでは投資先企業の数を増加させている。すでに10兆円の投資を完了させたSVF1号の投資先企業数は92社。一方で、単独で始めたSVF2号の投資先は95社に達している。さらに、ラテンアメリカのベンチャー企業へ投資する「LatAm」でも37社への投資を行っている。いずれも、創業間もない企業ではなく、数年後の上場が予想されるいわゆるユニコーン企業だ。
「1カ月で20社、営業日ごとに1社、投資先が増えている計算だ」(孫氏)
投資先企業の中から、20年度は年間で14社が上場した。21年度は、それを大きく上回る数の上場があると孫氏は見ている。これを孫氏は「上場のパイプライン」と表現した。投資した企業が事業を急拡大し、順次上場していくイメージだ。
SVFが合計で投資する企業数は、既に224社に達している。「このあとは確率論の世界に入っていく。エコシステムができていく」と孫氏は話す。100社に1社しか成功しないといわれるようなベンチャー投資の世界で、ほぼ上場が見えているユニコーン企業に絞って投資し、1社あたりのリターンはそこまで大きくなくても、着実に上場益を取っていく。これが孫氏の言う「金の卵の製造業」ということなのだろう。
20年度は大きな利益を出したものの、「反省すべき点もたくさんあった」と話す孫氏。その1つが「仕組みの欠如」だという。その仕組みとは、このように着々と投資先が上場を繰り返す姿だ。「単なるバクチではなく、仕組みでそれを進化するように持っていく。製造業のように毎年上場企業を生み出していく」(孫氏)
今回の4.99兆円の利益については、「あまり胸を張っていえるようなものではない」と孫氏。ただし、「1回達成したことが1回で終わるようにはしたくない。継続してそれを上回っていけるようにしたい。改善して、たまたまと思われないようになりたい」とも言う。
「5兆円や6兆円で満足する男ではない。10兆円でも全然満足はしない」(孫氏)
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