「上司が合わない」「面接時の業務内容と違う」――入社後のミスマッチ、どう対応? 4つの原因から探る:これからの採用戦略を考える(4)(3/3 ページ)
採用のミスマッチをゼロにすることは難しい。人事・採用担当者は、問題が起きてしまったときに備える要がある。4パターンのミスマッチを挙げ、対応法を紹介する。
入社者の声を拾う環境づくりを
ミスマッチが起きる背景はさまざまだが、共通していえるのは「問題が起きていても声を上げづらい」という事実だ。
日本人の特徴として、言いたいことが言えずに抱え込んだり、言わなくても理解して欲しいという期待をもっている人が少なからずいる。そのため、企業が積極的に意見を聞きに行く必要性が諸外国と比べて高い。
周囲が問題に気が付かないと、入社者は長らく不満を抱え、我慢の限界に達したときに突然退職の意思表示をする。事前に分かっていれば解決できたかもしれない事柄や、時には単なる誤解によって、退職を引き起こしてしまうことは非常にもったいない。
評価者である上司に、入社者が本音を話すことは非常にハードルが高い。そのため、配属後も上司任せにせず、会社に慣れるまで定期的に人事が面談したり、ツールを導入したりしてシステマチックに意見を拾い上げることが重要だ。そして、定期的な状況確認や上司側への働きかけなど、人事にしかできない役割で入社後の活躍までの道のりをサポートしていただきたい。
早期離職による企業へのダメージ
早期離職が発生すると、採用後に始まる予定だったプロジェクトが進まなくなるなど、事業計画に遅延を引き起こすこともある。また、採用コスト、選考に費やした時間の損失は大きく、別の人を探すのに同じ期間を要すれば、採用に倍の時間がかかったことになる。
さまざまな手を尽くしても解決が難しく、退職が防げない場合は仕方がない。しかし、人生の大きな転機として入社を決意してくれた方に、思うような活躍の場が提供できなかったことを真摯に受け止め、誠実な対応を心掛けていただきたい。
企業が不誠実な態度を示せば、退職者が会社や上司の悪口を言って社内の雰囲気を悪くしたり、離職後に社外で悪いうわさを立てたりするリスクもある。
企業にとってのダメージを最小限に抑えるための働きかけも、人事の仕事として時に必要だ。企業の都合による早期離職の場合、外資系企業ではまれに、転職サポートをしている企業もある。
入社後のミスマッチは、人事に多くの負担を強いることになる。そのため、採用戦略立案や選考段階など、入社前にできる限りの対策を講じていただきたい。そして、入社者が新しい環境で活躍することに集中して仕事ができる環境の提供を目指していただきたい。
本連載でお伝えしてきた採用ノウハウが、みなさまの企業の採用精度向上の一助となれば幸甚だ。
関連記事
- 1on1ミーティング、研修受け放題サービス導入……なぜ失敗? 良かれと思った育成施策の落し穴
あらゆる人事施策には、メリットとデメリットがあります。他社にとっては良い施策でも、自社で導入してみると合わなかったということも起こり得ます。今回は、マネジメントや人材育成に対する誤解を紹介します。 - 新チームでも飲み会要らず! 1時間・オンラインで「個性や強みを理解し合う」方法とは?
人事やマネジメント層の方は、テレワーク中に入社・異動したメンバーから「入社後しばらくたったが、このチームで働いているという実感が湧かない」「業務以外の会話がなく、常に一人で仕事をしている感覚がする」「困った時に誰に相談すべきか分からない」──といった声を聞くこともあるのではないでしょうか。本記事では、実際に集まらなくてもメンバー同士が1時間で相互理解を深められる方法をご紹介します。 - 定年再雇用「60歳以降、1年ごとに1割給与を減らす」はOKですか?
定年再雇用を新設する際、「60歳以降、1年ごとに1割給与を減らす」制度は問題ないか。実例を踏まえ、人事コンサルタントが解説する。 - 新卒応募が57人→2000人以上に! 土屋鞄“次世代人事”のSNS活用×ファン作り
コロナ禍で採用活動に苦戦する企業も多い中、土屋鞄製造所の新卒採用が好調だ。2020年卒はたった57人の応募だったが、21年卒は2000人以上が応募と、エントリー数が約40倍に急増した。その秘訣を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.