ソフトバンクGの好決算、利益が売上を上回ったのはナゼ?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
ソフトバンクグループの好決算が市場の話題を席巻している。同社における2021年3月期の連結純利益は4兆9880億円だ。しかし決算書をのぞくと違和感が生まれる。なぜなら、ソフトバンクGの税引前利益は、同社の売上高を超えているからだ。
実は全く違う、売上高と利益の内訳
そもそも利益とは、売上高から経費などを差し引いて残った部分を指す。そのため、税引前の利益が売上高を上回るのは“おかしい”といえる。それではなぜ、今回の決算ではこんな奇妙な状況が発生したのだろうか。
持ち株会社のソフトバンクGは、以前から投資会社としての側面を強めていたが、その傾向は20年4月の米スプリントと米Tモバイルの合併から一層色濃くなっていた。その姿勢は損益計算書にも現れている。現在では「営業利益」の表示を取りやめて、「投資利益」として計上している。これまでの営業利益の表示では、SVF関連以外の投資損益が含まれていないため、連結業績が実態よりも過小評価される可能性があると判断したためである。
その結果、報告セグメントの利益は「税引前利益」として表示されるに至った。この売上高5兆6281億円と、税引前利益の5兆6704億円は一見均衡しているように見えるが、その内訳は全く異なる。
まず、売上高について、ソフトバンクGの投資事業に関しては0円となっており、この部分は携帯子会社のソフトバンク事業とアーム事業のみで占められている。一方で利益の8割程度は、SVFなどの投資事業で占められており、ソフトバンクやアーム事業が占める部分は小さい。アーム事業に至ってはセグメント利益が338億円の赤字であるため、全体の利益を押し下げている形となる。
今回税引前利益が売上高を上回った理由は、売上高が0で利益を出した投資事業がほとんどを占めていたことが要因である。これまでのソフトバンクの決算において、利益を売上高が超えなかったのはたまたまであったということにすぎない。
そんなソフトバンクGの収益構造を確認すれば、世界3位の純利益といえども、その業績の評価は、幾分か割り引いて評価せざるを得ないだろう。同社の株価は、全体市況のあおりも受けつつ、決算後も株価を下落させている。これまでは1株1万円近辺で推移していたものの、今は8680円程度まで下落している状況だ。
孫正義氏は12日には「市場から過小評価されている」などどコメントしたが、利益の多くが株式評価額の増加による「含み益」だ。GAFAにおける事業会社の生み出す収益とは分けて考える必要があることも確かだ。仮に市況が軟調入りすれば、投資会社としては継続的に利益を生み出すことがなかなか難しくなってくる。この違いが、GAFAとソフトバンクGとの評価の差なのかもしれない。
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