ソフトバンクGの好決算、利益が売上を上回ったのはナゼ?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
ソフトバンクグループの好決算が市場の話題を席巻している。同社における2021年3月期の連結純利益は4兆9880億円だ。しかし決算書をのぞくと違和感が生まれる。なぜなら、ソフトバンクGの税引前利益は、同社の売上高を超えているからだ。
今年の”節税”に注目?
ソフトバンクGは、その巨額の利益に対して、ほとんど法人税を支払っていないと度々やり玉にあげられる企業でもあった。18年3月期には、海外子会社を利用した節税スキームで多額の欠損金を計上したことにより赤字となり、ソフトバンクG単体における法人税の支払いを免れたが、これについて後に東京国税局から4000億円余りの申告漏れを指摘されることになる。
これは、ソフトバンクGが海外子会社の株式などを取得したあと、子会社から配当を非課税で受け取るとともに、配当によって時価が下落した子会社株式を譲渡することで譲渡損失を生み出すという国際的な租税回避行為で、完全ホワイトというよりは、法の隙間を掻い潜ったグレーな行為であった。
20年度の税制改正によって、このスキームによる租税回避行為はクロとなった。20年の動きでいえば、ソフトバンクGが子会社を通じてアームホールディングスの株式75%を現物でソフトバンクGに配当させ、そのせいで下落したアームHDの株式をSVFに売却することで多額の譲渡損失を生み出したような租税回避行為だ。この手法は今回の決算分から不可能となった。
そのため、今回の巨額の利益に対して、ソフトバンクGがどのような租税回避スキームを用いて法人税を減らすのかにも注目が集まりそうだ。
ソフトバンクGは、ESG(環境・社会・ガバナンス)における世界的権威でもある「 FTSE4Good Index Series」と、その国内版でもある「FTSE Blossom Japan Index」という株式指標の構成銘柄に連続で選定された実績もある。
気候変動や労働慣行などの取り組みが高く評価されたとあるが、これらのインデックスは企業の社会的責任や持続可能性を重視を重視する投資理念によるものであり、われわれの年金資金を運用するGPIFも一部採用するベンチマークでもある。
そんな企業の根源的な社会的責任といえば、やはり企業活動によって得られた利益を納税することに他ならないのではないか。同社グループ各社では社員による植林活動やサンゴの保全活動などといったさまざまなESGの取り組みをアピールしているが、その裏で数千億円を上回る水準で租税回避を行っているのだとしたら、これはある意味では欺瞞(ぎまん)的といわれても仕方がない。
上記の税制改正は、いわゆる「ソフトバンク税制」という不名誉な二つ名を持つに至った。そのため、市場参加者の間では20年度分の同社における法人税納入額に注目が集まるが、今回もアッと驚く手法で少額の納税にとどまっているとしたら、果たして同社は本当にESGの理念を持っている会社なのか、いよいよ疑問となってくる。
【訂正:5/14 16:10 初出でソフトバンクGの連結営業利益と単体納税額の対比となっていたため、表現を修正いたしました。またESG各活動の内容は、ソフトバンクG単体ではなく、グループ各社も含めた取り組みです。訂正いたします。】
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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