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金融にSaaSモデルで挑むウェルスナビ 国内ロボアドで一人勝ち(1/3 ページ)

ロボアドバイザーサービスを提供するウェルスナビが好調だ。預かり資産額は1年間で倍増し4025億円となり、一人勝ちという状況だ。実はウェルスナビの決算資料には、ARR、チャーンレートといった指標が並び、一般的な金融事業とは異なった表現がされている。これらは、いわゆるSaaS企業が好んで使うKPIであり、ウェルスナビは自社をSaaS的な企業だと位置づけているからだ。

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 ロボアドバイザーサービスを提供するウェルスナビが好調だ。預かり資産額は1年間で倍増し4025億円(3月31日時点)となり、国内ロボアド市場における成長額の73%を占めた。まさに一人勝ちという状況だ。

 2021年12月期における、第1四半期の決算によると、売上高にあたる営業収益は78%増加し8億9700万円となった。営業損益は1億2300万円の赤字だが、広告宣伝費を除くと2億400万円の黒字。これは前年同期から大きく黒字転換した形だ。

 決算発表後の株式市場では、営業損益の赤字が市場予測を下回ったとして株価は下落した。しかし、20年12月の上場時に約2000円だった株価は、3300円近辺となっており、成長期待が持たれている。


ウェルスナビの柴山和久CEO

金融にSaaSモデル

 実はウェルスナビの決算資料には、ARR、チャーンレート(解約率)といった指標が並び、一般的な金融事業とは異なった表現がされている。これらは、いわゆるSaaS企業が好んで使うKPIであり、ウェルスナビは自社をSaaS的な企業だと位置づけているからだ。


ウェルスナビが開示した各KPI

 同社の柴山和久CEOは「海外の主要なSaaS企業がどういう開示をしているかを注視している」と話す。

 実は同社の事業モデルは極めてシンプルだ。顧客が預け入れた資産の年1%に当たる金額を手数料として受け取り、コスト面では、変動費としてパートナーレベニューシェア、資産運用のための売買手数料が預かり資産に連動する以外は、人件費を中心とした固定費だからだ。

 収益に直結する預かり資産残高は、顧客数と1人あたり資産額で決まる。3月末時点で、顧客数は26.9万人となっており、預かり資産4025億円を割ると、1人あたり約150万円だということが分かる。つまり、いかに顧客数を増やすか、そして営業収益に連動する1人あたりの預かり資産をいかに増やすかが、事業の基本モデルだということだ。

 これは、顧客数と顧客1人あたり売り上げ(ARPU)のかけ算で収益が決まるSaaSのビジネスモデルに近い。世界中の株式市場でSaaSモデル企業は注目されており、自らを「資産運用会社」ではなく、「テクノロジーベースのSaaS企業」として位置づけるウェルスナビのポジショニングのうまさが光る。

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