真っ先に変えるべきは日本人の「思考」 オードリー・タンが貫く「透明性」と「多様性」:「前例がない」をやらない理由に(2/5 ページ)
新型コロナの封じ込め戦略など、台湾の存在感が抜きん出ている。その中心人物として活躍しているのが、デジタル担当政務委員大臣のオードリー・タン氏だ。コロナ禍を通じて、日本が台湾に学ぶべきことは何か。
「前例がない」をやらない理由にしてはいけない
台湾のDXは、中卒、35歳、トランスジェンダーといった類を見ない人物であるオードリー氏をデジタル担当大臣に任命したことに始まり、わずか3日でリリースした「マスクマップ」アプリ、国民が意見を投稿できるデジタルプラットフォームの構築など、国内外で初となる試みを多数取り入れている。
日本社会ではいまだ「前例がない」という言葉が、やらない理由としてお決まりのように使われていることが多い。一方、台湾のデジタル化を率いるオードリー氏は、「前例にとらわれない」ことがデジタル革命を成功させると考えているという。
「オードリーは、『前例や慣習にとらわれていたらデジタル革命は不可能だ』と語っています。実際、台湾では政府も企業も『朝令暮改』が当たり前です。大まかな方針を決めたら、あとは走りながら随時修正する。それまでの台湾の意思決定プロセスとかけ離れていたことから、当初は批判が多かったのですが、現在の台湾では、その思考が受け入れられていると感じます」
デジタル化は、成功事例が少なく絶対的な正解がないことから、事前に失敗のケーススタディを多数想定するなど慎重になりがちだ。しかし、オードリー氏は「失敗も財産であり、失敗したら修正するか、やめてしまってもいい」と考えているそうだ。
「このフットワークの軽さこそ、台湾社会の変化を加速させている原動力でしょう。日本が遅れているわけではなく、台湾が想像以上に先進的なんだとオードリーは話していましたが、台湾を手本にして日本社会が変わっていかなければ、台湾との差は開く一方ではないでしょうか」
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