鉄道と脱炭素 JR東日本とJR西日本の取り組み:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/9 ページ)
2021年5月26日に参議院で可決した「地球温暖化対策推進法の改正法案」は、地球温暖化対策として、CO2など温室効果ガスの削減への取り組みを求めている。CO2削減では自動車業界の話題が突出しているが、鉄道業界はどのようにしていくつもりだろうか。
非電化区間は次世代バイオディーゼルカーがカギとなる
次世代バイオディーゼル燃料は、食用油の廃油やミドリムシから抽出した油分を合成した燃料だ。従来のディーゼルエンジンで使用できる。「次世代」以前のバイオディーゼル燃料はトウモロコシなどの農作物を原料としていた。しかしこの方法は食糧危機を招きかねず、実際に飼料用作物は高騰した。そこで、非食糧から製造される「次世代」に移行した。
軽油は主成分が炭化水素のため、燃焼によってCO2が排出される。次世代バイオディーゼル燃料を燃やしてもCO2が排出される。どっちにしてもCO2は排出されるけれども、軽油は化石燃料だから、本来は地中に眠ったままのCO2を掘り出して大気に放出するため温暖化の原因になる。
しかし、次世代バイオディーゼル燃料の主成分は植物由来の油だ。地上に植物として存在したCO2が燃料になり、燃やせば同じ量のCO2が出るだけ。食用油になる穀物やミドリムシの生産でCO2は吸収され、燃やされて、また吸収される。プラスマイナスゼロだ。これと合わせて森林再生などで植物を生長させれば、大気中のCO2量をマイナスにできる。
次世代バイオディーゼル燃料は、既存のディーゼルエンジンにそのまま使える。ただし、燃料ホース、パッキンなどの素材を劣化させる問題がある。エンジンオイルの交換頻度が高くなるし、エンジン周辺部品を劣化しない素材で置き換える必要がある。しかし、従来のエンジンを使ってCO2排出を実質ゼロにできるなら些細(ささい)な問題だ。
いまのところ最大の欠点は価格だ。1リットルあたり1万円と、軽油の100倍である。非電化区間は乗客も少ない赤字路線がほとんどで、コストアップしたくない。だから次世代バイオディーゼル燃料の大量生産、大量消費のサイクルを作り、価格を下げる施策が必要だ。
JR東日本グループの清掃車両が、次世代バイオディーゼル燃料を採用。車両自体の内燃機関を変更しない(出典:ユーグレナ、駅も地球ももっときれいに!JR東日本環境アクセス所有の清掃用車両においてユーグレナ社のバイオ燃料を使用開始)
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