au、MUFGグループとのシナジーをどう生かす? auカブコム証券、石月貴史新社長(2/3 ページ)
ネット証券大手のauカブコム証券が、17年ぶりに社長交代した。新社長はKDDI傘下のauフィナンシャルホールディングス専務も務める石月貴史氏だ。
KDDIグループであることの強み
——証券事業におけるグループ戦略は、銀行を主軸にしたものから、ユーザー基盤を持つプラットフォーム企業を中心としたものに変わりつつある。auカブコム証券でいえば、KDDIグループにあることが大きな強みだが、グループ内での連携はまだ始まったばかりだ。KDDIグループにおける、auカブコム証券の役割、グループシナジー、また楽天やPayPayグループに対するKDDIグループの強みはどこにあるか。
石月氏 総力戦の様相を呈している。KDDI自体が金融を重要事業という位置づけのもとで、金融各社をとりまとめる会社を作って運営している。
タッチポイントとしてのauは、2020年から既に獲得拠点として使っていて、実際それによって(20年は)創業来最も新規口座を取れた。獲得チャネルとしてのauは継続的に活用して、口座数を伸ばしていけると思っている。
ポイント投信では、auのポイントと組み合わせて、またauのチャネルと組み合わせてサービスを提供していく。auの顔を使ったビジネスの組み方を考えていかなくてはならない。
auから見ると、auカブコム証券の預かり資産残高が高いとauの通信料も高くなるなど、お互いにいい関係を築けている。当社とKDDIの連携を強めることはいいこと。もっと商品やサービスを重ねることで、通信ARPUが上がったり、顧客の解約を防げたりできる。例えば、NISAやiDeCoなど顧客と長くつながるサービスをうまく組み合わせれば、auにとっては解約率が下がる。そして我々は他の商品でナーチャリング(見込み客の育成)をしていく。
iDeCoは早期にスタートしたが、つながりがまだ弱いと思っている。お客がiDeCoを買って、auユーザーなんだけどいいことがあったかというと、特になかった。そういうことを強化するのがミッションだ。
——KDDIグループだけでなく、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)のグループでもある。
石月氏 2つのグループのバックボーンが他社にない強み。そこを最大限生かす。
au色が強くなったというのは誤解だ。私は、じぶん銀行の創業をとっかかりとして6年やって、KDDIに戻ってからは通信に重畳する事業の開発、そしてau PAYのコンセプトを立ち上げ、auフィナンシャルでは三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)とクレカ事業を立ち上げた。MUFGとのアライアンスについては深くやってきた。私の立ち位置は、au一色ではなくMUFGとの2グループを使って、シナジーを起こすこと。これから見えてくる。期待していてほしい。
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