出向・転籍の進め方 必要な手続き、人事的な配慮、助成金制度など解説:コロナで増えている(4/5 ページ)
コロナ禍により事業の再編が行われ、それに伴って中小企業でも出向・転籍が増えています。出向・転籍について確認し、必要な手続き、人事的な配慮、助成金制度などについて解説します。
本助成金は「新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主」を対象とし、こうした事業主が「在籍出向により労働者の雇用を維持する場合」に「出向元と出向先の双方の事業主に対して、その出向に要した賃金や経費の一部」を助成するものです。
本助成金は、従来の出向に関する助成金(雇用調整助成金等)と比較して出向元の事業主だけでなく、出向先の事業主も助成金の対象となるなど、助成がかなり手厚くなっています。
(1)本助成金の対象となる事業主・出向・出向労働者
本助成金は「新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小」つまり、新型コロナにより一時的に売上が落ちたため、労働者を出向させる事業主(出向元事業主)と、それを受け入れる事業主(出向先事業主)を対象としています。
また、新型コロナに伴う経済上の理由とは、具体的には以下のようなものをいいます。
- 観光客のキャンセルが相次いだことによる売上減
- 市民活動が自粛されたことによる売上減
- 行政から営業自粛要請を受け休業したことによる売上減 など
一方で、例年繰り返される季節的変動による売上減少や、事故または災害により施設または設備が被害を受けたことによる売上減少、法令違反等による処分によって事業活動ができず売上が減少した場合など、新型コロナと関連のない理由で売上が減少した事業主(および、その事業主からの出向を受け入れる事業主)は対象となりません。
次に、本助成金の支給対象となる「出向」は以下の通りです。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向であること
- 出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことを前提としていること
- 出向元と出向先が、親会社と子会社の出向でないことや代表取締役が同一人物である企業間の出向でないことなど、資本的・経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められること
- 出向先で別の人を離職させるなど、玉突き出向を行っていないこと など
前述の通り、ここでいう「出向」とは在籍出向のことであり、転籍は含まれません。また、親会社から子会社への出向といった関連会社間の出向も、本助成金の対象にはなりません。
最後に本助成金の支給対象となる「出向労働者」については「出向元事業所において雇用される雇用保険の被保険者であって、本助成金の支給対象となる『出向』を行った労働者」がそれに当たります。
ただし、図表1の労働者は、本助成金の対象とはなりません。
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