新たな可能性、「プロフェッショナル派遣」は日本を救えるか?(3/3 ページ)
日本の終身雇用制度は数年前から崩れ始めている。市場変化の激しい今、正社員のみでは、社内の改革やイレギュラーな事象に対応できない。では、どうするべきか。筆者は「プロフェッショナル派遣」を解決策の一つと見ていて……。
1.突然の退職による欠員
小規模の企業であればあるほど、1人でも急に抜けてしまえば業務が回らなくなり、早急な人員の確保が必要になる。
2.育児休暇・中期的な休職者
育児休暇を取得する社員のポジションを、半年〜1年間程度カバーする必要がある。女性はもちろんのこと、男性の育児休暇取得率も6年連続で上昇していると、厚生労働省の調査で判明した。
3.高度な専門スキル・豊富な経験の不足
即戦力の正社員採用ニーズが高まっている一方、市場の人材不足や一部の優秀な人材の取り合いで、思うような採用が進んでいない企業が多い。
4.正社員の補填・リスクヘッジ
正社員は会社の基盤となるため、採用にはとても慎重になる。特に、役職が上がれば上がるほど採用に要する時間は長くなり、半年〜1年は適切な人材が見つからないこともある。不安要素を残したまま急いで採用するより、一時的に外部リソースで補填し、時間をかけて、ミスマッチのない正社員採用を目指す方が企業のためになることも多い。
5.期限付きプロジェクト
新しいシステムの導入、合併に伴う統合業務、新商品発売時のプロモーション、開発案件など、プロジェクトが終了すれば人員が不要になるため、正社員として採用ができない。
6.従業員数の制限
会社全体や部門での従業員数が制限されており人員を増やせない一方で、ビジネスの拡大に伴い業務量が増加、既存の従業員のみで業務をさばききれない。
社員の離職を緊急補填した、60代シニア派遣の活躍事例
一般的な派遣では見られない、シニアのプロフェッショナル派遣事例を最後に紹介したい。米国に上場している家電メーカーの日本支社で、経理・財務のトップが30日予告で急に退職した。経理担当者はもう1人いたがジュニアレベルで、月次決算などを担当できる後任がおらず、急きょハイレベルの経理・財務のスペシャリストが必要になった。
そこで、外資系企業での経理・財務経験が豊富で、決算業務などができる、60代前半、バイリンガルのプロフェッショナル派遣を提案した。その方はたった数日の引き継ぎ作業後、月次決算、税務申告、英語でのAPACオフィスとのやりとり、米国本社への報告など、全ての業務にスムーズに対応した。緊急での採用だったにもかかわらず、これほどマッチした人材を見つけられたことに、採用企業もとても驚いていた。
雇用形態にとらわれず、必要なときに必要な労働力を確保する柔軟な姿勢を持つことが、今後の企業の人材活用力を左右するだろう。
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