新たな可能性、「プロフェッショナル派遣」は日本を救えるか?(2/3 ページ)
日本の終身雇用制度は数年前から崩れ始めている。市場変化の激しい今、正社員のみでは、社内の改革やイレギュラーな事象に対応できない。では、どうするべきか。筆者は「プロフェッショナル派遣」を解決策の一つと見ていて……。
プロフェッショナル派遣とは何か
プロフェッショナル派遣の活用が最も進んでいるのは、外資系企業と日系のIT企業だ。
外資系企業では、業界や職種を問わず、幅広い分野でプロフェッショナル派遣が活躍している。コロナ禍で、業界によっては大きな打撃を受けた企業もあったが、IT企業、コンサルティングファーム、製薬メーカーなどでは相変わらず人材のニーズが非常に高い。
リモートワークが話題になり、多くの企業が積極的にDX(デジタルトランスフォーメーション)とサイバーセキュリティに投資した。そうした背景から、デジタルコンサルタント、プロジェクトマネジャー、インフラエンジニアなどの需要が高まった。
これまで完全オフィスワーク、定時時間が固定されて働き方の柔軟性が低かった企業も、ニューノーマルに適応する必要がでてきたため、就業規則変更のための人事スペシャリストのニーズも急増した。企業のさまざまな部門において、次の3カ月、6カ月がどうなるのか見えない中、とにかく一番求められたのは人材に関する柔軟性だった。その点で、期間雇用のプロフェッショナル派遣が重宝された。
プロフェッショナル派遣は一般的な派遣と大きく異なり、業務の専門性が非常に高い。一つの職種にフォーカスし、そのスキルと経験を複数の企業で高めてきた専門人材だ。
ジョブ型雇用の外資系企業で同じ年数働いてきた正社員と能力に遜色なく、社員と肩を並べて自立して仕事ができる。与えられた課題は指示を待たずに解決する。マニュアルがなくても、自分で解決策を探したり立案したりできる。
プロフェッショナル派遣には、マネジャー以上のレベルの人材もいる。大手外資系企業の第一線で活躍していた女性が、子育てを理由に柔軟性の高い“派遣”という形態を好んでいることもある。
最近特に増えているのは、外資系企業に長く勤めていた50代後半、または60代のシニア層だ。CFO、コントローラー(経営管理)、人事部長など、経営に関わるレベルまでキャリアを積んできた高度人材である。彼らは、セカンドキャリアとなる新しい働き方を希望し、プロフェッショナル派遣という働き方を積極的に選択して働いている。
外資系企業はもともとスペシャリスト採用(専門職採用)を文化としているため、プロフェッショナル派遣の役割や考え方はごく自然であり受け入れられやすい。これが、外資系企業でプロフェッショナル派遣の活用が進んでいる理由だ。そして、外資系企業で活躍するチャンスが多いため、バイリンガルのプロフェッショナル派遣も多い。
ここ数年になってようやく、日系企業でも専門職の期間雇用ニーズが増加し、プロフェッショナル派遣が普及してきている。
人材不足が起こる背景と、プロフェッショナル派遣の活用シーン
市場の変化以外にも人材や労働力不足のリスクは多数存在している。そして、欠員が出るのは突発的だったり、その穴埋めに緊急を要したりすることもある。どのようなシーンで社内のリソース不足が発生し、プロフェッショナル派遣が活用されているのか。代表的な例が以下の6つである。
関連記事
- 定年再雇用「60歳以降、1年ごとに1割給与を減らす」はOKですか?
定年再雇用を新設する際、「60歳以降、1年ごとに1割給与を減らす」制度は問題ないか。実例を踏まえ、人事コンサルタントが解説する。 - DXを阻むのは「雇用文化」? 日本企業が改革できない“3つの理由”
なぜ、日本企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)をうまく進められないのだろうか。ITエンジニアの雇用と育成にまつわるサービスを提供するpaizaの社長の片山氏が、「DXとは何かの理解」「雇用文化」「経営」の3つの側面から解説する。 - 基本給、住宅手当、賞与……その処遇格差は合理的? 「同一労働同一賃金の裁判例」から学ぶ判断基準
賃金を構成する基本給、家族手当、住宅手当、賞与、退職金について、最高裁の判断が示された事例を紹介します。 - 「Trelloで個人情報流出」から考える、人事のITリテラシー
プロジェクト管理ツール「Trello」経由で、個人情報が流出するという問題が発生しました。この問題は、使用者のITリテラシーの低さに起因しているという点が重要です。人事がITシステムを活用する際に理解すべきポイントを解説します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.