ホテル業界復活のカギは「朝食」にあり? コロナ禍でヒルトンが進めた115項目の改善:連載・瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/4 ページ)
ホテルにとって朝食はキモ。“朝食でホテルを選ぶ”人も多いだろう。人気の尺度という点で朝食の良しあしは注目されるポイントになっているのは事実だ。筆者はソーセージと焼き鮭に注目する。
朝食改革で顧客満足度がアップした「ヒルトン東京お台場」
ヒルトン東京お台場(東京都港区)は、そもそも朝食について決して印象の良いホテルではなかった。
昨秋のGoToトラベル期間中に訪問する機会があったが、ロビーに面した「シースケープ」で提供される朝食ブッフェは、外資系デラックスホテルの華やかなイメージとは異なり、サラダ・フルーツ類の豊富さを除けば“ビジネスホテルレベル”といっても過言ではなかった。デラックスホテルといえば、各種卵料理の実演なども常識的だが、そういったレベルでもない。
料理だけではない。例えば、ディスタンスと動線の方向を促すプレートが床へ置かれていたが、ツルツルと滑って勝手な方向に向いてしまっている。ブッフェボードには、だらしないテーブルタップのコードが平然と見えている。スタッフの動きも散漫としておりゲストに接する緊張感もない。
当時、すでに除菌・消毒など新型コロナウイルスの感染対策は確立しつつあり、マスクの着用も常識であった。しかし、スタッフがバラバラのマスクを着用している「絵」は、スタイリッシュな外資系ホテルにあって見苦しささえ感じた。
その後、GoToトラベルも中止となり同ホテルの稼働率は激減。ホテル側は“暇”ということになるが、改善を模索していたようで、ゲストのいない時期だからこそ、外部の意見も取り入れ朝食のブラッシュアップとサービス改革に乗り出していったようだ。
コロナ禍を逆手にとって、改善を進めるこうした動きは他のホテルでも多くみられた。同ホテルでは、問題点を洗い出したところ115項目にも及んだという。現場ではリスト化と、一つ一つの課題をつぶす日々の努力が始まった。もともと能力の高いスタッフばかりである。マネジメント層が方向さえ示せば、高いポテンシャルを発揮する。
そんな朝食改革の話を関係者から聞いたこともあり、4月に同ホテルを再訪してみた。
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