イベント運営は“肌感覚”から脱却できるか? 「ファンの分析」が秘める可能性:既存ファンがリピートしていなかった……!(1/4 ページ)
イベントの顧客分析は難しい。例えばライブに参加する際、A社でチケットを買い、B社で配信映像を視聴し、グッズはC社のサイトで購入する──というように、複数の企業がかかわり、データをばらばらに持っているからだ。この現状を変えようと取り組む、バルス(東京都千代田区)のCEO、林範和氏に話を聞いた。
新型コロナウイルス感染症の拡大で、ライブやコンサートを主催、運営するエンターテインメント業界は大きな打撃を受けた。
会場に観客を入れるのが難しくなったため、ライブ映像のオンライン配信が広まった。また、以前からチケットの多くはWebサイトで販売されており、イベントのデジタル化はある程度進んでいる印象を受ける。
しかし、「エンタメ業界、特にイベント運営はアナログ文化で、顧客データをうまく活用していない」と指摘する人がいる。エンタメのDX化に取り組むバルス(東京都千代田区)のCEO、林範和氏だ。顧客データを活用することで、イベント運営はどのように変わるのだろうか。話を聞いた。
データはばらばら、判断は「肌感覚」
林氏が最も課題に感じているのは、チケット販売など一つのフェーズでデジタル化をしても、それが他のフェーズに生かせないことだ。なぜなら、チケット販売、映像配信、物販は、それぞれ別の会社が提供していることが多いからだ。
つまりファンは、A社でチケットを買い、B社で配信映像を視聴し、グッズはC社のサイトで購入する。これでは誰がどのような購買行動を行っているのか、データが分断されて全く分からない。結果として、一つのイベントで得た顧客情報を分析して次回に生かす、といったことができず、「現場の雰囲気」や「肌感覚」を頼りに判断をする状態だ。
林氏が、イベント運営のDXが必要だと感じたのは、前職の経験がきっかけだという。ゲーム会社でソーシャルゲームに携わっていた林氏にとって、エンタメ業界には「もったいない」と感じることが多かった。
「ソーシャルゲームは、ユーザーがログインしてから何をしたか、どんなイベントに参加したか、どこで課金したかといったデータが全て取得できます。イベントの好評・不評のデータも取れる。それによって運営しやすくなっています。アーティストやライブは、ゲームのように毎日課金してくれてもおかしくない属性のコンテンツです。ファンである顧客のことを理解できていないのは、もったいないと思いました」
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